「宿泊学習は行きたくない!」宣言
娘が、2泊3日の宿泊学習に行っている。
幼稚園の頃3回ほど義実家にお泊まりした娘は、年中の終わりに、「次に一人でお泊まりをするのは10歳になったとき」という謎の宣言をした。
年長のときは、家から徒歩3分の友達の家に「お泊まりに行く!」と元気よく出かけて行ったのに、数時間後、「お家に帰りたいと泣いているよ」とママ友から電話がきて迎えに行った。
それから1度も一人でどこかに泊まりに行くことがないまま、娘は5年生になった。
少し繊細な部分がある娘。小学校に入ってからは、月曜日になると行き渋りになったり、給食が食べられないと泣いて帰ってきたことがある。
「どうしたら良いんだろう……」と悩むこともあったけど、私たち親が悩んでいても仕方がないので、なぜ行きたくないと思うのか、給食を食べることにどんな不安があるのか。娘の気持ちを聞いて、理解するということを続けた。
何が正解だったのかはわからないけど、娘が話すことを、「そっかぁ。そういう気持ちなんだね」と聞き続けているうちに、安心したのか、成長とともに強くなったのか……。行き渋りがなくなり、給食はおかわりができるほどになった。
そんな娘にとって……。というか、私と夫にとって、5年生にある宿泊学習に行けるかどうかは大きな不安要素だった。
コロナ前は4年生からあったという宿泊学習。コロナを機に、宿泊は5年生からになった。ちょうど1年前、幼稚園から仲良しの1つ上のお姉さんが宿泊に行ったとき、娘は、「私、来年の宿泊は行きたくない。お休みする」と言った。
想定内の宣言だった。でもまだ1年ある。「よし! この1年で、宿泊学習を楽しみにさせてみせる!」。
1年前の私はそう決めた。
成功体験をたくさん作った1年の準備期間
あれから1年。この間、本当に時間をかけて、わざとらしくなりすぎないように話しながら、「宿泊学習は楽しいもの!」ということを娘に印象づけてきた。
「パパとママがいないと寝れない。絶対行かない!」
4年生の頃の娘は頑なに拒否していた。
「そっかぁ。宿泊はお休みするのね~」
「まだ1年ある」。時間に余裕があるので、心にも余裕がある。
娘が通う小学校は、2年毎にクラス替えがあるので、4年から5年になるときにはクラス替えがある。行き渋りや給食が怖いを乗り越えた娘にとって、3、4年生のクラスが替わるというのは不安要素たっぷりな出来事だった。
宿泊に向けて……の前に、クラス替えに向けて、娘の気持ちを高めていく作戦を決行した。
何か新しいことを体験するとき、人は、「大丈夫かな?」「できるかな?」ということを心配する。でも、実際にやってみるとその悩みの98%は無駄な心配だったということが多い。
私と夫は、46年生きてきたからわかっている。それを10歳の娘にわかりやすく伝えるには? と夫婦で考えた。
大好きなディズニーランド。怖がりの娘は乗れるものが少なかった。「これは、高い散歩か?」と思うくらい、ただランドの中を歩き回って1日が過ぎるなんてことはよくあって、1度万歩計が3万歩を越えたときは3度見したくらい。
「怖そう」と思う乗り物の中から、「これなら乗れそう」というものを聞いて乗ってみる。
「乗ってみて怖かったら、二度と乗らなくていい。けど、乗ってみておもしろかったら、怖いと決めつけて乗らなかったことがもったいないと思わない?」
娘が絶対に無理なものはわかるし、「これはいけるでしょ! いや、むしろ好きでしょ!」というものもわかる。
そういうものを選んで、「乗ってみる」「やってみる」ということをすると、「楽しかったぁ!」「これ、好き!」という経験を積むことができる。
日々の中に、こういった様々な成功体験を作った。
「クラスが替わるのは不安だけど、新しいクラスにはワクワクしない? 新しいお友達ができるんだよ。世界が広がるんだよ!」
娘は、5年生になって新しいクラスになったとき、「パパとママが言う通り、おもしろそうな友達がたくさんいる!」と言って帰ってきた。
5年生のクラス替えはクリア! さて! 次は6月の宿泊学習だ!
クラス替えを乗り越えた娘は想像以上に成長していて、5月には「私、宿泊学習が楽しみになってきた」と言った。
そして、とうとう迎えた宿泊学習。
娘はとびきりの笑顔で手を振りながらバスに乗っていった。夫と2人、バスの窓に向かってピースサインを送った。
夫婦2人で過ごす2泊3日
娘を見送り帰宅した私と夫。
数年ぶりに2人きりで過ごす2泊3日。いつもは、娘を中心にまわっている家の中が、夫と私、2人の時間としてまわっている。
昼間はそれぞれに仕事があるし、こんなときこそ! とばかりに、夕方遅くまで外出できる仕事を入れたり予定を詰めてはいるけど、夜は2人きり。
初日は帰りも遅くなり、冷蔵庫の中にも食材がたっぷりあったので、2人で夕飯を食べた。
2人きりで食べる夕飯。普段は、娘が、学校の話やお友達の話をするのを2人で、うんうんと聞きながら食べている。その娘がいない夕飯は、なんだか静か。
「今頃、キャンプファイヤーしてる時間だねぇ」なんて言いながら、夕飯を終える。
「明日は、どこかに夕ご飯食べに行こうか。子連れじゃいけなそうな店に」
2人で出かける約束をする。
なんだか懐かしいような、新鮮なような。不思議でうれしい感覚。
娘がいない家の中は、想像以上に静かでさみしいけども、夫と2人で過ごす時間も、これはこれでとっても貴重でしあわせな時間。
「眠れてるかなぁ?」
「寝てるだろう」
「泣いてないかぁな」
「大丈夫だろ」
結局、話しの話題は娘のことばかりだけど、明日の夜ご飯を2人で食べに行くことにルンルンしちゃう。
娘を育てながら、私も夫も親として成長している。そして、夫婦としても成長している。
そんなことを思う夜なのです。