義母と2人のランチ
先日、義母と2人でランチをした。平日だったので、夫は仕事、娘は学校に行っていて、たまには2人で会うのもいいよねってことで出かけた。
「せっかくだから、贅沢しちゃおうよ」と言ってお寿司屋さんに入り、自分では絶対食べないお値段の寿司ランチをご馳走になった。
ランチの後は、2人で街をぶらぶらして春服を2着買ってもらった。
夫は男3人兄弟の長男。弟2人はまだ運命の相手と出会えていないので、夫家にとって嫁は私だけ。
息子三人を育てたお義母さんはとってもドライな性格をしていて、嫁姑というよりも年の離れた女友達のような関係を築けている。
7回忌を迎える義父の話
義父が亡くなって5年。今年の秋に7回忌を迎える。
義父が定年退職をした後、義両親は近所のスポーツクラブに2人で通っていた。そこにはたくさんの仲間がいて、運動をした後はクラブハウスで軽く飲んで帰ってくるというのが2人の日常だった。
「クラブの人たちが今でも時々お父さんの話をするの。クラブの中で目立っていた人だったけど、亡くなって5年も経つのにまだ話題にしてくれる人がいるなんて幸せよね。こないだ、7回忌をクラブハウスでやろうなんて言い出した人がいて慌てて断ったのよ」
本当にたくさんの人から愛されていた人だった。72歳で亡くなった義父のお通夜には130人を超える人がきてくれた。
私は、嫁いでから義実家に自分の友人を何人も連れて行っているので、私の友人たちも数人お通夜にきてくれた。
「お通夜やお葬式って、その方の人生がどれだけ素敵だったかがわかるよね」
友人の1人が私の隣にきて、ぼそっと言ってくれたこの言葉がずっと頭に残っている。
「クラブハウスでの7回忌、お義父さんも天国で喜ぶんじゃない?」そう聞いたら、義母がこんなことを言った。
「お父さんを好きだって言ってくれる人はたくさんいたけど、みんながみんなそうではないから。新しい人も増えているし、5年も前に亡くなったお父さんの7回忌をクラブでやるなんて聞いたらおもしろく思わない人もいると思うわ。どんなに好かれている人だって100%なんてないもの。好きと言ってくれる人と同じか、それ以上にそう思わない人もいるんだから。でも、そういう風に言ってくれるくらいお父さんのことを思ってくれる人がいるってことがうれしいし、きっとお父さんも天国で喜んでいると思うわ」
私は、義母のこういうところが好きなのだ。
100%好かれたいと思う気持ち
誰だって、人から好かれたいと思いながら生きている。人からどんな風に見えるかが気になるし、誰かの気に障るような存在になっていないかなんてことばかりを悩む。
若い頃の私はとにかくそういうことばかりを気にしていた。コソコソ話している人を見たら、「私の悪口言ってるのかも!?」と被害妄想爆発ガールを発動して落ち込んでいた。
ある時、そんな風に思うんですという話を上司に話したら、「お前、自意識過剰だね」と言われたことがある。
そのときは、「はぁ? 何この人!」と思ったけど、時を経て、人生経験を積んだ今、あの頃の私に伝えたいのは、まさにその上司が言った言葉と全く同じ言葉だったりする。
「どんなに好かれている人だって100%なんてないもの」
義母はこの言葉の後に、「100人中100人に好かれている人なんていないし、そんなのは不自然よ」と言った。
きっと、20代の私が聞いたら理解できなかっただろうこの言葉。
40代の私は深く頷ける。でも、70代の義母のレベルにはまだ達していないので、「なるほど~。勉強になります」という気持ちも込みで深く頷く。
「私のことを好きじゃないっていう人もきっとたくさんいるんだけど、最近そういう人もいるよなぁ。そりゃそうだよなぁって思えるようになってきたんだよね」
そう言うと、
「そうよ。あなたはなかなか個性的なんだから当然苦手と思う人もいるでしょう。そういう人に、どうして嫌うの? と聞いたり、その人に好かれるために何をしたらいいんだろうと考えるのは時間とパワーの無駄遣い。それなら、今あなたのこと好きだと思って仲良くしてくれる人たちを大切にすることに時間とパワーを使ったほうがよっぽど人生が豊かになると思うわ」
あぁ。学びが深い。とっても学びが深い。
義母と私の平日2人ランチ。これ、定例になりそうな予感。