「察してよ」ではなく「私はこうしたい」と伝えることが大切
――たしかに何も言わないで「察して」というのは、相手からしたらハードルが高いですよね。
高祖:「察してよ」だとなかなかうまくいきませんよね。「察して動く」のは、普段からやっていることだから、やるべきことに気づいて自分からさっと動くことができるということ。普段、ママがメインで育児・家事していると、パパはやるべきこと、やった方がいいことに気が付かない。残念ながら当事者意識を持っていないということです。これはその都度伝えて、知ってもらったり、時には、ママがいない時間をあえて作って、パパ一人で子どものお世話をするなど、主体的にかかわる時間を作ることも大事です。ママが一緒にいると、「ママ、泣き止まないよ」って、赤ちゃんがママの元にリターンしてくることもあるでしょうし。
「なんでやってくれないの!」と突然怒りをぶつけると、険悪なムードになってしまったりケンカにもつながります。
こんなときは、少し言い方を変えてみましょう。たとえば「私はこうしたい」「私はこういうふうに思っているから協力してほしい」と、自分を主語にした「アイメッセージ」で伝えるということです。「なんで抱っこしてくれないの!」というより、「今、手が離せないから、抱っこしてあげて」と伝えるということ。さらに、落ち着いているときに「泣いたら抱っこすると、赤ちゃんが安心するんだって。そういう安心感は、赤ちゃんの心の成長・発達にもいいらしいよ」と伝えてみましょう。やることや、やった方がいい理由なども伝えると、抱っこしてくれる機会がだんだん増えてくると思います。
家事のタスクは「見える化」しよう
それから家事などはタスク(やること)を「見える化」しましょう。そのうえで具体的にどうシェアするのがいいか相談してみましょう。察するのは難しいかもしれないけれど、目の前にリストが上がってきて可視化されることが大事です。相手が忙しいに違いないと思って、自分一人であれこれ抱え込みすぎると疲れきってしまいます。
そしてパートナーは、ママの困り感をわかっていないことも多いです。困っていることを伝え、どのように一緒にやっていきたいのかを相談しましょう。やるべきことが軽減されたり、自分だけが頑張るのではなく、パートナーと一緒にと思うだけで心の余裕ができ、子どもに対してのイライラが減るでしょう。
一人であれこれ思い悩む前に、人の手や考え方を借りること。それだけでもずいぶん楽になることもあります。大変なときはまわりの人を頼りましょう。その時は相手に返せなくても、自分に余裕ができたときに今度は困っているママたちを助ける。そうやってみんなで助け合っていく様子を見ることは、子どもにもいい影響を与えます。がんばりすぎず、親子の時間を楽しめますように。
教えてくれたのは 高祖 常子さん
高祖 常子(こうそ ときこ)さん
子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント。
資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、ほか各NPOの理事や行政の委員、「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省)構成員(2019年)も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。
著書は『こんなときどうしたらいいの?感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。
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著者 高祖 常子
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