特集記事

毎日長時間スマホをつかう子は脳発達がほぼゼロ!?「ゲームやスマホが及ぼす子どもの脳への影響」とは

家族・人間関係

stock.adobe.com
 毎日長時間スマホをつかう子は脳発達がほぼゼロ!?「ゲームやスマホが及ぼす子どもの脳への影響」とは

2022.10.06

今や小学生もスマホを携帯する時代になりました。しかし、スマホやタブレットが子どもたちの成長に悪影響を与えていることも徐々にわかってきています。そこで、書籍『子どものデジタル脳 完全回復プログラム』の監修者でもある川島隆太先生に、今の子どもたちの現状について教えていただきました。

広告

特集:親も子も幸せになるための「子育て」

お話を伺ったのは……川島隆太先生

川島隆太先生

東北大学加齢医学研究所 所長。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター センター長。
東北大学加齢医学研究所では7万人以上の子どもの脳と認知機能の発達を10年間追跡調査。そこから特にスマホを使った場合に学力が大幅に下がることを発見、スマホが子どもの脳に与える深刻な影響に警鐘を鳴らしている。著書に『スマホが学力を破壊する』、『さらば脳ブーム』など、300冊以上を出版。近著として『子どものデジタル脳 完全回復プログラム』の監修をおこなっている。

書影

子どものデジタル脳 完全回復プログラム
著者:ヴィクトリア・L・ダンクリー 
監修:川島隆太
価格:1,980円(税込)

デジタルスクリーンが子どもたちに与える深刻な影響とは?

1出典:stock.adobe.com

――新型コロナウイルスの影響でスマホやタブレット、ゲーム機などスクリーンを有する「デジタルスクリーン」への接触時間がかなり増えたと思います。このことは子どもたちの脳にどんな影響を与えているのでしょうか?

川島隆太先生(以下、川島先生):私は仙台市の教育委員会とともに7万人の子どもの学力の変化や習慣、考え方の変化を見てきているのですが、コロナ禍でリモート授業や家にいる時間が増えたことによって、デジタルスクリーンに触れる時間が増えたことは明らかになっています。ただ科学的にいえば、どこまで学力に影響が出ているのかはまだわかっていません。
わかっていることは、子どもたちの自己肯定感が下がったということです。しかしこの結果も、デジタルスクリーンに触れる時間が増えたからというよりも、社会不安そのものが影響を与えているといえますね。

――先生が監修された書籍には「スマホやタブレット、ゲームなどは前頭葉に深刻な悪影響を与える」とありますが、具体的にどのようなことが脳で起きているのでしょうか?

川島先生:脳の前頭葉の中には運動を扱っている運動前野と、その前方に広がっている前頭前野といって高次機能を扱う領域があります。
前頭前野の働きはたくさんあるのですが、思考力や注意力、記録力そして、コミュニケーション全般を担当しています。
これらがスマホやタブレット、ゲームなどを使うと、不思議なことに前頭葉には反応が起こらない、もしくは強い抑制が起こるということがわかっています。
デジタルスクリーンを使うことで「物を考えているはず」、「前頭葉も大いに働くだろう」と思うかもしれませんが、不思議なことに脳の血流変化を測ってみると、まったく働いている証拠が出てこないのです。

――それは子どもたちの場合も同じ結果でしょうか?

川島先生:はい。私たちの研究では、デジタルスクリーンを頻繁に使う子どもたちの脳の発達も抑制されていることがわかっています。
脳がうまく働かないということが習慣化されると、もしかすると脳発達にも抑制がかかっているのではという結論に至っています。

ゲーム・テレビ・スマホ。どれが「マシ」かというと……?

2出典:stock.adobe.com

――ゲームの中にもブロックを組み立てたり、町を作ったりするなど、比較的穏やかで「プログラミング教育に役立つ」と言われているようなゲームの場合は問題ないと考えがちですが、いかがでしょうか?

川島先生:一見、脳を活性化させているようなゲームなら、ただテレビをぼーっと眺めているよりも時間を決めてやってもいいと思うかもしれませんが、ゲームはそのうちやり方に慣れてしまいます。そうすると先ほどもお話しした通り、前頭葉に強い抑制がかかってしまいます。

――それはなぜでしょうか?

川島先生:それは神経伝達物質であるドーパミンが関係しています。ドーパミンは継続して大量に分泌されると、快楽物質であるために「もっと遊びたい」と歯止めがきかなくなり、その結果脳活動が抑制されてしまうことがわかっています。
またゲームの場合は、大脳の白質という脳内の連絡路の部分の発達が遅れることもわかっています。

――ではテレビとスマホ・タブレットの場合はどうでしょうか?

川島先生:テレビの場合も多くの場合が前頭葉に抑制がかかります。ですから私たちは「テレビは脳のリラクゼーション」と呼んでいるくらい脳を使わない、脳を休ませるアイテムだと思っています。また、テレビの場合は大脳皮質という脳の神経細胞層の発達が遅れることがわかっています。
とはいえ、テレビは途中でコマーシャルが入ってくるので集中する状態が長くは続きませんよね。それに、ゲームとは違って番組は時間が区切られています。継続する時間が短くて済むので影響は少ないと言えます。

スマホやタブレットの場合は、大脳の白質と大脳皮質の両方が一度に遅れるということがわかっているので、脳発達の遅れの観点からはスマホとタブレットが深刻だと言えますね。

スマホやタブレットの使用時間が1時間未満の場合は成績に支障はない

3出典:stock.adobe.com

――脳発達の遅れというのは、スマホやタブレットを長期間・長時間やったことによる結果なのか、それとも短時間でも使えば悪影響は出てしまうのでしょうか?

川島先生:まだはっきりはわかっていませんが、ほぼ毎日時間を気にせず使っている子どもは、大脳の多くの領域で脳発達がほぼゼロに等しいというデータが出ています。ですから現在、多くの日本の子どもたちが脳発達を阻害されているだろうと考えています。
一方で学力との関係をみてみると、スマホやタブレットの利用時間を1時間未満に抑えている子たちは成績に悪影響は一切でていません。むしろ、まったく使っていない子よりも成績がいいくらいです。1時間以上使い続けると、使用時間が長くなればなるほど成績が落ちていくということもわかっています。

――では、まったく使わないよりも1時間未満ならば使っても学力には影響はないということなのですね。

川島先生:そうですね。ですからスマホやタブレットを長時間使ってしまう子に困っているならば、いきなり使わせないようにするのではなく、まずは1時間未満に抑えるところからスタートしてみてはいかがでしょうか。

わが子がゲームをやりすぎ、スマホを見すぎ……と頭を悩ませていた方も多いのではないでしょうか。子どもの脳発達にも大きな影響のあるスマホやゲームなどについては、もう一度お子さんと一緒にルールを考えることが必要かもしれませんね。

広告
saitaとは
広告