お話を伺ったのは……庄子寛之先生
東京都公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学科を修了。学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。また、元女子ラクロス日本代表監督でもある。『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』 (青春出版社)など著書も多数。
『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』
著者:庄子寛之
価格:1,628円(税込)
「ただ見る」ときの3つのポイントとは?
――前回のお話で、子どもを叱りすぎてしまうと悩むとき、親は子どものためよりも自分を整えることに重点を置き、「まっいいか」とあきらめることも大事、というお話を伺いました。次はどんなことに気をつければいいでしょうか?
庄子寛之先生(以下、庄子先生):どうしても親は、毎日子どもにあれこれ指図したくなってしまいますが、子どもを「ただ見る」ということも大事です。この「ただ見る」という行為によって、これまで気がつかなかった子どもの一面が見えてきます。
――子どもを「ただ見る」という行為は簡単なようで、とってもハードルが高いように思います。実践するときのポイントを教えてください。
庄子先生:ポイントは3つです。
- 「人はすぐには変われない」ことを理解する
- やらない権利を認める
- 小さな変化を感じ取る
人はあらゆる行動が習慣化されているので、すぐに変わることはできません。子どもが同じようなことを繰り返したとしても、すぐには変われないということを理解してあげてください。
次に、子どもが服を脱ぎ散らかしたまま、靴は揃えないなど、日常の些細な行動について何度注意してもやらない場合は、今は「やらない」という権利を認め、やらない理由に興味を持ち、数日間だけ見ていてください。
見続けていると、小さな変化に気づくかと思います。パジャマが洗濯カゴに入っていたり、靴が揃えてあるなどプラスの行動があれば、すかさず褒めてあげてください。こうして少しずつ時間をかけていけば、子どもの行動に変化がみえてきます。そして、わが子の別の一面も見えてきます。
――「ただ見る」を実践するとき、家族には前もって話しておいたほうがいいのでしょうか?
庄子先生:旦那さん(奥さん)、子どもにとってのおじいちゃん・おばあちゃんと共有できればいいですが、この価値観を最初から共有してもらうのは大変かもしれません。ですから、まずは1人で自分を整えてから実践してみることをおすすめします。
第一声は「どうしたの?」がオススメな理由
――どうしても「ただ見る」ことができない瞬間はどうしたらいいでしょうか?
庄子先生:そんなときは「どうしたの?」と声をかけてみてください。
「宿題が終わっていないけれど、どうしたの?」、「どうしたの? なにか困っていることがあるんじゃない?」などと、声をかけてあげてください。
「宿題やってないじゃない! 早くしなさい!」、「なんて顔してるのよ。また学校でケンカしてきたんでしょ?」と声をかけるのとは、全然違います。決めつけた言い方はせずに、まずは「どうしたの?」と聞いてあげてください。
――「どうしたの?」で親子関係はどのように変化するでしょうか?
庄子先生:親が「どうしたの?」という声かけをクセにすると、いきなり叱るという行為がなくなります。困っているなら助けるからね、という姿勢を子どもに見せてあげることができます。そして子どもは、親が自分のことを見て、気にかけてくれているんだと理解します。「どうしたの?」の問いかけから会話が生まれれば、自然と親子のコミュニケーションが豊かになっていきますよ。
大事なことは、自分や子どもに100%を求めない考え方
――子育てにおいて、子どもをただ見ることが難しく、できない自分に落ち込んでしまうことがあったら、どうしたらいいでしょうか?
庄子先生:ここまで「ただ見る」ということが大事だとお話してきましたが、完璧にできる人はいません。自分や子どもに対してイライラしてしまうこともあるでしょう。大事なことは完璧にする必要はないということです。いつもならすぐに子どもに小言を言ってしまうところを、1回でも「ただ見る」ことができれば、それは大きな一歩ですよ。
――最後に、saitaの読者の皆さんへメッセージをお願いします。
庄子先生:私も現在、皆さんと同じように子育て中です。毎日大変かと思いますが、子育ての期間はあっという間だと思います。いつか振り返ったときに「あの時は叱ってばかりだったな……」と後悔することがないよう、「わが子は素晴らしい!」と、前向きな気持ちでいてください。そしてなによりも、「私の子どもだから大丈夫!」と、お子さんのことを信じてあげてください。そうすれば、あなたもお子さんもきっと幸せになりますよ。
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取材中、常に前向きな言葉で子育ての悩みに対するアンサーをお話ししてくださった庄子先生。もし後ろ向きな気持ちで子育てをしているのなら「あなたはあなたのままで素晴らしい」、「まっいいか」、「どうしたの?」など、心がふわっと軽くなるような素敵な言葉を使って、前向きな気持ちで子どもと向き合っていきたいですね。