特集記事

「空気を読めないって言われる…」思春期の子どもへ親ができる声掛けのポイント3つ

家族・人間関係

stock.adobe.com
 「空気を読めないって言われる…」思春期の子どもへ親ができる声掛けのポイント3つ

2022.07.07

臨床心理士・公認心理師のyukoです。2007年頃に流行りだした「KY(空気が読めない)」。10年以上経った今でも、空気を読めるか読めないかは中高生にとっての死活問題。社会で生きていくためには空気を正しく読み取るスキルが必須と言っても過言ではありませんよね。どんな子が空気を読んでないと言われるのか、子どもが悩んでいるときどんな風に声をかけたらいいのかを、考えていきます。

広告

特集:親も子も幸せになるための「子育て」

【特集】親も子も幸せになるための「子育て」

この特集ページを見る

もくじ

「空気を読む」とは一体
どんな子が「空気読めない」と言われる?
周りと違うテンション
自分勝手、わがまま
時と場合をわきまえない
他人の気持ちに対して鈍感
周りと上手くいかない…そんな悩みを聞いたとき。
1 思春期の特徴と本人の性格に線引きをする
2 本人の「考え方のクセ」を一緒に思い出す
3 大丈夫でいられるコミュニティを見つける
性格だけに原因があるわけではない

「空気を読む」とは一体

「空気を読む」とは、「その場の雰囲気から状況を推察する、特にその場で自分が何をすべきか、すべきでないか、相手のしてほしいこと、してほしくないことを憶測して判断する」
(国語辞典『大辞典』)

会社やママ友コミュニティにおいても、その場の繊細な雰囲気を無視した発言や態度は煙たがられますよね。

クラスや部活など、子どものコミュニティにおいても、空気を重視する傾向は変わりません。
むしろ「同質」を重要視し、「異質」に対して敏感になる多感な思春期世代なら、なおさらです。

一人ぼっちの子出典:stock.adobe.com

では、どんな発言や態度が「空気を読めない」ものなのでしょうか。

どんな子が「空気読めない」と言われる?

周りと違うテンション

一人だけ楽しそうにしている、テンションが高い子は「場違い」。
みんなが楽しんでいる中、一人だけ暗い顔をしている子は「ノリが悪い」と揶揄されます。

周囲の気分と調和が取れていないと、違和感を抱かれやすくなるんですね。

自分勝手、わがまま

他の子もしゃべりたいかもしれないのに一人でずっとしゃべっている。
みんなでやっている作業や遊びに参加しない。
自分の意見を押し通そうとしてくる。

相手の反応を気にかけなかったり、意向を汲まずに我を主張する傾向も「空気が読めない」になるようです。

時と場合をわきまえない

真面目に取り組む時間なのに一人だけふざける。
言ってはいけないことを言う。
笑ってはいけない場面で笑う。

一見、問題児と呼ばれる子以外は当たり前にこなせそうですが、複雑な内情が絡んでいる場合も多いんです。

例えば、「AちゃんとBちゃんは知ってることだけど、Cちゃんにはまだ言ってなかった。今はまだ言うタイミングじゃなかったのに。あの場であんな言い方しないでほしかった。」などと言われるケース。

女子高生の会話出典:stock.adobe.com

大人でもタイミングや言い方によって齟齬が生じるときもありますよね。
よりセンシティブな思春期では、少しのすれ違いが大きな軋轢に変わってしまうんです。

他人の気持ちに対して鈍感

人の話を聞いてない、興味がなさそうに見える。
大事な話をしているのに話題を変える、デリカシーのない言葉をかける。

周囲から見ると、他者の気持ちに無頓着だったり、配慮がないように捉えられやすい場合も。
一方、本人からすると、はっきり言ってくれないとわからないと感じていることがあります。

言い含む、行間を読む、日本特有の文化を難しいと思う子も多いのでは。

周りと上手くいかない…そんな悩みを聞いたとき。

1 思春期の特徴と本人の性格に線引きをする

ここ数年、「空気が読めない=発達障害?」と結び付けて考える風潮が根付いてきているように感じます。
ですが一歩立ち止まって考える必要があります。

思春期の中でも中学生以降の友人関係は特に難しくなりやすいもの。
「共通」や「一緒」を好み、グループとして一体化するのを好み、「異質」を嫌い、取り除こうとする。
また、白か黒か、両極端に考えやすいのも思春期の特徴の一つです。

頭を抱える中学生出典:www.photo-ac.com

空気が読めないと話す子どもの性格を疑うのではなく、どんな空気に苦しんでいるのかを知る。
本人の性格に原因を持っていくのではなく、状況の整理が第一です。

2 本人の「考え方のクセ」を一緒に思い出す

悩みを話してくれたとき、「空気読めないとこあるもんね」とコメントするだけでは、傷口に塩を塗ってしまいます。
近くにいる家族だからこそ気づいている本人の受け止め方や考え方のクセはあるはずです。

例えば、

  • 相手の話を最後まで聞かずに話し始めてしまうときがある
  • 周りが何をしているのか見ていないところがある
  • 感情が先走る、思ったことをすぐ口に出しやすい
  • 一度思い込むと修正せずに突き進む傾向がある
  • 相手の反応をネガティブに受け取りやすい

意外と見落としがちなのは、本人の「思い込みやすさ」や「受け取り方の癖」です。
”相手の気持ちがわからない”と嘆く子の中には、気にしすぎてわからなくなっている子もいます。

本人の「クセ」を一緒に思い出すと、悩みに寄り添った声かけがしやすくなります。

親子出典:stock.adobe.com

3 大丈夫でいられるコミュニティを見つける

あるコミュニティでは「積極性がある」と言われても、違うコミュニティでは「自分勝手」と解釈される場合もあります。
誰にとっても、生きづらさを感じるコミュニティはあるのではないでしょうか。

特定の友人関係が上手くいかないとき、違う居場所を見つけるのもひとつです。

集団ではうまくいかないけど、3人程度なら上手くやりとりができる。
異性の友達のほうが話しやすい。
幼馴染であれば気の置けないコミュニケーションがとれる。

生徒同時の会話出典:stock.adobe.com

空気を意識せずにいられる場所は大きな支えになります。

性格だけに原因があるわけではない

相手の顔を見ずに文面から心情を読み取るSNS世代。
マスクの下に隠された表情を読み取るコロナ文化。

今の思春期世代特有の困難さもあるのではないでしょうか。

「空気を読めない」理由は本人の性格ばかりに問題があるのではありません。
空気を読むのではなく、吸える環境を作っていけるといいですよね。

広告

著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

気になるタグをチェック!

saitaとは
広告