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おうちで伝えてほしい“被害者にも加害者にもならないための性教育”

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 おうちで伝えてほしい“被害者にも加害者にもならないための性教育”

2022.06.06

臨床心理士・公認心理師のyukoです。個人差はあれども、小学校高学年から中学校までに友人や兄弟・メディアから「性交」に関する情報を得る子が多いといわれています。今も昔も、保健の教科書から性知識を得る子は少ないのでは。しかし、これからも学校で行われる数時間の性教育に身を任せていいのでしょうか。家庭で伝えていきたい性教育とは。被害者にも加害者にもならないため、男の子にこそ伝えてほしい性知識について考えていきます。

男の子への性教育は難しい?

「娘には伝えられるけど、息子にはどんな性教育が必要なのかわからない…」
「性への関心が変に高まってしまったら困る。」
また、「男の子は自分から性に興味を持つから大丈夫。AVを見て学んでいく。」意見もあるようです。

ですが本当に、スマホやタブレットで得る性知識で十分なのでしょうか。

スマホを見る男の子出典:stock.adobe.com

1970年代からフェミニストの方々から広まった、「レイプカルチャー」という言葉があります。

「レイプカルチャー」とは、「性暴力は普通のこととされ、レイプしないよう教えられるのではなく、レイプされないよう教えられる文化」
性暴力が起きたとき、「そんな服装をしていたなんて」、「2人で飲酒してたらそれは‥ね。」など、被害者の落ち度を責められるときがあります。
”被害者に非がある”思考は、まさにレイプカルチャーの賜物。

「被害者にならないように」と自衛手段とされることを教えられる機会は多々ありますが、逆はどうでしょうか。
「相手を大切にするための技術」を教えられる機会は少ないのでは。

ただのおふざけやいたずら。相手の合意はとれてる?

スカートをめくる・「かんちょー」する・ズボンをおろそうとする。
大げさに聞こえるかもしれませんが、幼いいたずらであっても「合意のない性的いやがらせの芽」といえます。

泣く女の子出典:www.photo-ac.com

また、少し大きくなると性器の大きさを比較する・性的嗜好について笑う、「悪意のない性的暴力」を行う子もいます。
そして10代半ばから後半以降、性交渉に興味を持ち、性的関係を結ぶ子も増えてきます。
「合意のある性行為」を行えている子はどれくらいいるのでしょうか。

相手を傷つけないための知識は、異性関係なく、年齢に合わせて身に着けていくのが大切なのだと思います。

「相手の気持ちを大事にできる子」を育てていくために

反抗期や思春期にさしかかってしまうと、性に関する大切な話は日に日にできなくなってしまいます。
だからこそ、成長の段階に合わせ、節々でメッセージを伝えていくのが大切です。

「好意の裏返し意地悪」でも相手を傷つけている

子ども同士の関係では、相手の気持ちをうまく汲めず、嫌な思いをさせてしまうことはよくあります。
ただそこで、「好きな子には意地悪しちゃうもんだから」と解釈して場を収めるのは少し危険です。

「好意があれば多めに見られる」が成長すると、「好きなので出過ぎた行動を取っても仕方ない」になるかもしれません。
動機が好意であっても嫌悪であっても、相手の感じた不快感は変わりません。

「仲良くしたいなら、相手の嫌がることはしない。」と一貫して伝えるのが大切です。

言い聞かせる大人出典:www.photo-ac.com

好意の裏返しだったとしても、「意地悪しても相手に気持ちは伝わらないし、かえって嫌われても仕方ない」と教える必要があります。 

アダルトコンテンツは、教科書ではない

今は小学生でもiPhoneを持つ時代。性的コンテンツは、子どもにとってより身近な存在となっています。

AVや成人向け動画で描かれている企画や性行為は、各対象に向けたファンタジーです。
相手を思うように支配したい主人公の夢が映し出されているものもあれば、現実を大きく誇張して妄想を膨らますような演出が盛り込まれているものも。
相手の心身に対する配慮がなされないまま、ストーリー展開される作品も多いです。

アダルトコンテンツから膨らんだ妄想で大切な人を傷つけてしまわないよう、大人が適切な情報を発信するのが大切です。

親子 話す出典:www.photo-ac.com

性に関するセンシティブな情報は伝えにくいですし、子どものプライバシーを漁ってまで伝える必要はありません。
ただ、”そろそろ興味がでてくる頃かも”と感じたとき、TVで関連情報を見たとき、一言親の考えを伝えるだけでも性に対する印象は変わってきます。
同性の親から伝える機会を作ってみるのもよいかもしれません。

相手を大切にするための「性的同意」を学ぶ

望まない妊娠をさせないための避妊は当然。
加えて、相手が「Yes」と表明していない性的行為は暴力になりうるという認識も大切です。
性的関係の同意について、現代の学校授業で教えられる機会はほとんどありません。
学校で教えられないのであれば、大人が機会を見つけて伝えていく他、術がないのです。

性的行為に関する次の項目で、どれが正解になるでしょうか。

・キスをしたら、次は性行為してもよい
・相手が嫌と言っていなければ、OKのサイン
・ 家に泊まる=了承済の証
・相手の”やめて・まだ嫌だ”は恥ずかしがっているだけ
・酔った勢いでする性行為は仕方ない

「相手を大切に思う上での性的同意」を鑑みると、全て不適切な考えです。
当たり前に理解できる子を増やしていくためには、一歩踏み込んだ話し合いも必要。

親子 話す出典:www.photo-ac.com

好きな子ができたとき、彼氏・彼女がいるとわかったとき、相手を大切にするための術を伝えられるといいですよね。

できるときに、できる範囲で伝えていく

性に関する話題を気まずく思ったり、タブーにしたい気持ちはもっともだと思います。
「寝た子は起こすな」「臭い物に蓋をする」考えもあるかもしれません。

ですが、自分も相手もするための性教育は見過ごせない課題になってきているとも感じます。
できるときに、できる範囲で、重要なメッセージを発信していけるとよいですよね。

参考文献
・Gender Hand Book「必ず知ってほしい、とても大切なこと。性的同意」 公益財団法人 京都市男女参画推進協会 発行
・「これからの男の子たちへ 男らしさから自由になるためのレッスン」 太田啓子.大月書店(2020) 


著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。