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子どもの心にしっかり響く“怒るだけじゃない叱り方”

家族・人間関係

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 子どもの心にしっかり響く“怒るだけじゃない叱り方”

2023.07.07

臨床心理士・公認心理師のyukoです。社会で、「叱らない子育て」「褒め育て」などが推奨され、怒ってしまった自分を責める親や怒れなくなっている親が増えているようです。ですが、子どもに叱らないだけの子育てが本当によいものなのでしょうか。子どもに大切なメッセージを伝えたいとき、どんな風に言えば心に響くのか。叱り方を考え直してみます。

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特集:親も子も幸せになるための「子育て」

【特集】親も子も幸せになるための「子育て」

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もくじ

「叱らない子育て」を息苦しく感じる方が多い
今一度考え直したい子どもへの「叱り方」について
ときに感情的に怒るときがあってもよい
叱っているとき以外に親が大切に思っている考えを伝える
親が感情的になっているときは率直に伝えるのもひとつ

「叱らない子育て」を息苦しく感じる方が多い

子どもは褒めて育てるべき、叱りすぎるのはよくない、などネットでは「叱らない子育て」に注目が集まっています。
「叱らない子育て」とは、叱る代わりに伸ばしたいところを褒めたり、親がお手本を見せてルールを守るように伝えるなど、感情的に怒らない関わり方をいいます。

親子出典:stock.adobe.com

たしかに、ずっと穏やかな気持ちで子どもに関われたら平和かもしれませんね。

ですが、親も一人の人間です。
疲れていたり、イライラしたとき、強く怒りすぎてしまうときもありますよね。

大切なのは「叱らない」だけではなく、「子どもに伝えたいことが伝わっているか」。
子どもに対する「叱り方」について、今一度考え直していきます。

今一度考え直したい子どもへの「叱り方」について

ときに感情的に怒るときがあってもよい

常に感情を抑えて、冷静に接するのが必ずしもよいとは限りません。
本当に大切なメッセージは、ときに感情を伴って伝えた方が心に残りやすいものです。

例えば私は、「命に関わる危険性があったとき」「自分自身や誰かに手を出したり傷つける言葉を言ったとき」、この2点に限っては感情的になっても強く言い聞かせるようにしています。
「自分も周囲の人も大切に想って接してほしい」と考えているとわかってほしいからです。

怒る親出典:stock.adobe.com

「親が子どもにしてほしくないこと」と広くとらえると、その時々で軸がぶれてしまったり、親から子への要求が増えていくのでおすすめできません。

  • 汚い言葉を使ったとき
  • 兄弟姉妹に手を出したとき
  • 食事を粗末にしたとき

子どもに何を大切にしながら育ってほしいのか。夫婦で話し合っておくのがおすすめです。

叱っているとき以外に親が大切に思っている考えを伝える

普段は真面目な話をするのが照れくさかったり、忙しくする中で忘れがちですが、親がもっている信念や価値観を伝える機会はとても大切です。

親にあまりよい印象を抱いていないお子さんからは、よくこんな言葉を耳にします。

「うちの親は勉強勉強ばかり。学歴しか興味ないんだよ。」

「行儀よくしろ、迷惑かけるなとか。人の評価ばかり気にする親なんです。」

「今どこにいるの?何時に帰ってくるの?としつこく連絡してきて。帰ったらいつも遅いと怒られる。過干渉なんです。」

お子さんの言葉だけを聞いていると、親御さんに対してよい印象が抱きにくいですよね。
ですが実際親サイドの話を聞いてみると、必ずしも、愛情が歪んでいたり過干渉なわけではありません。

「自分たち両親がいなくなったあとでも、自立して生きてほしい。今は大学を出ないと安定した職業に就くのが難しい時代だから心配で口うるさく言ってしまうんです。」

「第一印象や見た目で判断されて損してほしくないから、今のうちから世を上手く渡れるような癖を身に着けてほしくて」

「物騒なニュースが多いから、夜暗くなって制服の子が1人で歩いてて大丈夫か不安なんです。暗くて治安のよくない場所もあるから避けてほしくて。」

困る親出典:stock.adobe.com

どの親も、子どもへの愛情ゆえに、強く言い聞かせたいメッセージを送っているんですよね。

ですが、叱りながら伝えてしまうと、まっすぐ受け取ってくれないのが難しいところ。

親がどんな価値観をもち、子どもに何を大切にしてほしいか。
大人になるまで、いえ、大人になっても気づけない方は多くいます。

落ち着いて食事をしているとき、夜眠る前、テレビで関連する話題がでたときなど、生活の中で冷静に率直なメッセージを送るのが重要です。

親が感情的になっているときは率直に伝えるのもひとつ

親がイライラしているから自分に怒っているのか。
それとも本当に大切な内容だから怒っているのか。

子どもからは判別が難しいものです。

‟ママ、またイライラしてるから収まるのを待とう”、‟きっと八つ当たりだ。スルーしよう”などと思われてしまうと、親の思いが伝わらず、また同じ喧嘩をしてしまいます。

「お母さんも今疲れていて強く言ってしまいそうだから、あとで改めて話そう。」

「さっきは強く言いすぎたけど、これだけは伝えたかったんだ。忘れないでほしい。」

など、時間をおいて話し合ったり、大切な内容をあとから改めて伝えるのが肝心です。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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