「青が好き。でも、女の子はピンクなんだって」
娘は、幼稚園の頃から「青色」が好きでした。
洋服、カバン、ペン、小物。お祭りのおめかしで着けたエクステも青色。
頭の先から足の先まで全部青ですから、どこにいたってすぐにわかります。ファッション的な見地を気にしなければ、娘が好きで選んだ物なので好きに身に着けたらいいと可愛らしく見ていました。
ところがある日、お友達に「女の子はもっとキラキラしたピンクとかの方がかわいいよ」と言われたらしく。
全身青色こそがパーフェクトファッションと信じていた娘にとっては、まさに青天の霹靂。(青だけに!)
自分は「青」が好き。でも、どうやら「女の子はキラキラしたピンク」がかわいいらしい。
その情報は、少しだけ娘のアイデンティティを揺さぶったようです。
「ねえ、女の子はピンクなんだって。わたしもピンク買おうかな〜」
ある日娘がぼそっと相談してきたのです。
「ピンクが着てみたいの?」
「う〜ん、わかんない」
娘は5歳なりに迷っていました。でも、4、5歳くらいだと、なかなか抽象的な概念の理解は難しい。
だから「自分らしい色を選べばいいよ」と言ってもなかなか通じません。
また「自分が好きな色を選んだら?」と言うのも、「好き、嫌いだけで選べないから迷ってる」のであって、少し不親切だなと思いました。
大人だって、たとえば断捨離をするとき。
「いりますか? いりませんか?」とか「これ、好きですか? 好きじゃないですか?」と聞かれて迷うことなんてよくあります。「好き」かどうか、は自分の中にしっかりとした軸やアイデンティティがあるからこそ、選べる基準なのだと思います。
「ピンクが女の子っぽいって思うのは、まだまだ甘いな」
「え、だって、ピンクは女の子でしょ」
「かわいい服や、かっこいい服を着るのは『女の子っぽく』なるためじゃないんだよ。君が『この服着てるのってめっちゃ嬉しい!』って思うことが大事なんだよ」
自分らしいにちょっと支えを付けてあげる
好きな服を着たり、好きな小物を持っているとテンションが上がります。
それは、色かもしれないし、キャラクターかもしれないし、制服的なものかもしれません。
大切なのは「男の子らしい」「女の子らしい」でないのはもちろん、もっと言えば「自分らしい」でもなくて。
娘が何かの選択で迷ったときは「自分が最高のパフォーマンスを出せる物を選びな」ということを、手を変え品を変え伝えています。
青色を着てテンションが上がるならそれでいい。
たまにはピンクを着て、キラキラお姫様みたいな格好をしたいときだってある。
いつも草履を履いているけど、運動会に向けてスニーカーを履いてみるのもいい。
もちろん、人に言われて好きじゃなかった色や形に興味を持つのもいい。
「自分らしさ」とは物事を決めるときの、判断の軸だと思います。
自分で決める経験がまだ少ない子どもにとって、なんだかわからない「自分らしさ」にこだわるのは、もしかしたら自分らしさではないかもしれません。必要なのは、自分で決めたり、人に言われて揺らいだりしながら一つ一つを自分で考えて決めていく経験。それが、いつの間にか自分の基準や価値判断の軸になる。そうして初めて「自分らしい」に気がつくのだと思います。
だから、今はまだ「自分らしい」なんかに囚われずに、大いにいろんな意見に迷い、悩み、好きとか後悔とかしながら決めていけばいいと思います。
親から見た「うちの子は青が好き」なんて「らしさ」は、全然一生モンじゃない。いつの間にかシレッと変わる程度のものだと思うのです。
でも、一つ一つ迷っていることには、判断の軸になるような価値観を添えてあげたいと思うのです。
「好き、嫌い」だけじゃないし、親の考える正解を教えてあげるだけでもない。
判断するためのちょっとした「支え」を増やしながら問いかけてあげることが、大切なんじゃないかと思うのです。
「運動会で一番はやく走れる格好はどの服?」
「発表会で一番自信を持って「見て!」って思えるのはどんな服?」
「水泳の授業のあと、簡単に着替えられそうなのはどの服?」
すぐには決められないけど、そうやって色んなことを自分で考えて、決めて行けたらいいなと思います。