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私が子どもに言ってしまった。「親史上最大に後悔した言葉」

家族・人間関係

2022.03.05 更新

育児では子どももままならないが、自分自身もままならない。親だって人間だから「子どもにこんなことを言いたくないのについ言ってしまった」と自己嫌悪に陥る日もある。子どもはスポンジみたいに大人の言動を吸収するので、できる限り栄養価の高い言葉を投げかけたい。そう思っているのに、感情に任せて毒のような言葉が出てしまうと、自分も苦しくなる。ぱっと見は薬のように見えて、蓄積されると毒になる言葉もある。私が親史上最大に後悔した言葉がそうだ。

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特集:親も子も幸せになるための「子育て」

子どもにかけがちな“自意識の呪い”

子どもに言ってしまって最も後悔した言葉が
「AしないとBって思われちゃうよ」
だ。

「片付けしないと、だらしない子って思われちゃうよ」
「静かにしないと、うるさいなって思われちゃうよ」
といった言葉を発してしまった。

私自身も親からよく言われた言葉で、無意識に刷り込まれていたのかもしれない。

反省する女性出典:stock.adobe.com

でも、本当は言いたくなかった。
そう言われて育ったことによる“自意識の呪い”を、我が身を持って痛感していたからだ。
なのに、やきもきした時につい言ってしまって、深く深く反省した。

「ダメなヤツって思われちゃダメだ」という強迫観念

大人になってからも、よく上司から
「もっと気を付けないとダメなヤツって思われちゃうよ」
とたしなめられた。それだけツッコミどころがあったのだ。

ADHDの気がある私は飽きっぽく忘れやすい。マルチタスクが苦手で、計画的に行動できず締め切りを破ったり遅刻したりする。手のかかる子どもだったし、扱いにくい部下だったろう。
親も上司も、よかれと思って言ってくれていたのはわかる。「AしないとBだと思われる」ことは事実であり、直したほうがいいというのも正論だ。

悲しむ女性出典:stock.adobe.com

しかし、ダメ出しされ続けた私は
「人からどう思われるか気にして行動しないといけない。私はダメな人間だから、がんばって認められるようにふるまわなきゃ」
と自意識過剰になり、承認欲求が高まって、やたらと人目を気にして自己評価ではなく他者評価を軸に行動するようになった。

大勢の飲み会ではそれぞれの発言の意図を考えすぎてクラクラして、よく「気にしすぎじゃない?」と言われた。仕事では上司にまたダメ出しされるのではと必要以上に恐れ、自分から提案できなくなり「もっと主体性を持って」と指摘された。

当時はレールに乗れない自分を『マイペースな自由人』と認識していたので
「私が気にしすぎ?主体性がない?そんな馬鹿な」
と腑に落ちなかった。

今思えば、確かに「人にどう思われるか」を死ぬほど気にしていた。
AしないとBって思われちゃうから、と。

頬杖をつく女性出典:stock.adobe.com

健全にあきらめた時、できない自分を受け入れられた

実際にはいろいろな理由で、決められたレールに乗るのが苦手な人がいる。私もそうで、なんとか枠に収まろうとしても
「ちゃんとやらなきゃ、でも本当は嫌だ、ああなんかうまくいかない!」
とから回り、とにかくしんどい。

どこまでが努力の範疇で、どこからが能力の範疇なのかは、本人にすらよくわからなかったりする。
だから承認欲求は満たされず、自己肯定感も上がらず、自意識は過剰なまま消耗していく。

これまでは「みんなと同じようにできない自分が悪い」と思っていたが、カウンセリングを受けてADHDの傾向があるとわかり、私の努力不足だと思っていた諸々が、自分の苦手分野だと知った。

それで初めて
「Aが不得意な苦手分野なら、できなくてもしょうがない。それでBと思われてもしかたない」
とあきらめられた。一気に楽になり、前ほど人からどう思われるか気にならなくなり、物事の捉え方も変わった。

上を向く女性出典:stock.adobe.com

確かに継続力がなく不注意も多いから会社員は向かないけど、瞬発力や行動力が高く、フリーランスは向いている。会社だと同僚にどう思われるか気になってストレスだったけど、今は個人で仕事しているから四六時中周りを気にしなくていい。だったらそれでいいじゃないか、と。

いまだに自意識過剰気味で自己承認欲求も強いけど、前よりも自分を受け入れられるようになって、かなり身軽になった。

母親だけどブリーチしてピンクの派手髪にしてみたり、30代だけどミニスカを履いてみたり、公園で寝転がって昼寝してみたり、不得意な仕事を正直に苦手だと伝えて辞退したり……。

人からは褒められないだろう。
でも、人目を気にせず行動する日々は、とにかく生きやすかった

人にどう思われるかより、自分がどう感じるか

「AしないとBって思われちゃうよ」
この一言は愛だと思う。
でもときに呪いになる。心を縛る縄になる。

であれば、自分の子どもには言いたくない。
たとえ多くの人に好かれなくたって、認めてもらえなくたって、道を外れない限りは自分が望む方向に歩いてほしい。
他人を気にするあまり、自分を卑下したり縛ったりしてほしくない。
自分を評価せず、そのまま受け入れてほしい。
受け入れたうえで、どう行動するか自分で決めてほしい。

親子出典:stock.adobe.com

もしだれかに、あるいは自分に
「AしないとBって思われちゃうよ」
と言いそうになったら、いったん飲み込んでほしい。
何かを伝えたいなら、別の言葉で伝えてほしい。

主語を他人でなく本人にして、
「自分自身がこう感じちゃうんじゃない?」
と問いかけ、本人に判断させてほしい。

自分目線で生きないと、人生が色あせてしまう。
自分色の人生を、自分の足で歩んでほしい。
自分にも、子どもにも、あなたにも。
 

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著者

秋カヲリ

秋カヲリ

だれもが自己受容できる文章を届けたい文筆家。女は生きにくい、だからしなやかに生きたい。 ・著書「57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室」(遊泳舎) ・恋愛依存症に苦しみ、心理カウンセリングを学ぶ ・出産して育児うつを経験、女の幸せを考える ・ADHDなどのグレーゾーンゆえに会社員として適応できず、4社を転々としてフリーランスのライターに ・YouTuberオタクで、YouTuberの書籍編集・取材執筆多数

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