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無意識に「教育虐待」をしないために。熱心な教育に潜む“3つの落とし穴”

家族・人間関係

 無意識に「教育虐待」をしないために。熱心な教育に潜む“3つの落とし穴”

2022.07.19

臨床心理士・公認心理師のyukoです。夏期講習を目前に、子どもの成績や通帳とにらみ合い、頭を抱えている方は多いのではないでしょうか。子どもの人生を豊かにするための受験がいつしか、家族を不自由にしている。そんな社会の中では、「教育虐待」が問題になっています。過度な叱責、厳しい行動制限やスケジュール管理、なぜ歯止めが効かなくなってしまうのでしょうか。成績に目を向けるばかりに見落としてしまいがちな視点について考えていきます。

親になると気づけなくなる「落とし穴」

子どもが生まれた瞬間、「ただ健康に生きてさえいてくれればいい」と思う人が多いのは事実だと思います。
ただ、子育てをしていく中では様々な情報に触れ、心配が募り、感情が揺さぶられていくものです。

  • 子どもが生きていく社会への不安
  • 親自身の幼少期への後悔ややるせなさ
  • 自分と似ている我が子への後ろめたさ
  • パートナーと似ている我が子への気がかり
  • 正解のない子育てへの心もとなさ

悩む母親出典:www.photo-ac.com

将来の道筋に関わる「進学」を目の当たりにすると、親の価値観が強く表れます。
子どもの成績や受験への心配が尽きないとき、「見落としがちな穴」について考えていきます。

何のための受験か、誰のための合格か。(目的の見落とし)

最初は「なんとなく」始めた受験勉強も、投資した金額が積み重なるごとに後へ引けなくなる。そして、合格を「投資回収」と認識してしまう側面は少なからずあるのではないでしょうか。
「子どもの努力が報われてほしい、子どもの成功体験となってほしい。」そう思うのはもっともです。

ただ、一度親の思いを脇に置き、子どもの立場に立った声かけをするのも必要です。
「できるところまででいい」「失敗しても大丈夫」「どんな結果でも価値なんて変わらない」
子どもが安心して頑張れる声かけこそが大切なのではないでしょうか。

子どもは本当に「大丈夫」か。(SOSの見落とし)

「なんでこんなこともわからないの?」「他の子はもっと努力してるよ」

お子さんと二人三脚で歩いている方こそ、つい口から出てしまう言葉だと思います。
言い過ぎたと反省し、後から子どもに謝ると「大丈夫」と返ってくる。
そして、また勉強せずに息を抜いている姿を見ると同じ言葉を繰り返してしまう。

子ども自身「大丈夫」と言ってるし、懲りずに遊んでばかりだから親の言葉なんて聞いていない。

親の認識はそれでよいのでしょうか。

落ち込む子ども出典:stock.adobe.com

子どもは大人よりも口が立たず、自分の考えや気持ちを不器用にしか伝えられません。
”言い返したところで親は自分の意見なんて聞いてくれない。”
そう思い、口を閉ざしていく子も多いように感じます。

子どもは、親が思う以上に自身の立場をわかっています。
親の保護がなければ食べていけないし、嫌われたら家での肩身が狭くなる。
だから、「大丈夫」と言うほかありません。

「全然大丈夫」と言って無理をする子の中には、体が先にSOSを出す子もいます。
朝起きれない、お腹が痛くて動けない、集中力がなくなる、食べれない・食べ過ぎる‥
子どもであっても鬱はあります。SOSを見過ごし続けると、問題は根深くなるばかりです。

子どもが発する「大丈夫」だけを鵜呑みにせず、心のSOSに目を向けてください。

子育てのフィードバックは数年後に返ってくる(子視点の見落とし)

幼いころは文句を言わずに親の叱責や要望を受け止めていても、数年後、過去をどのように捉えるかはわかりません。
周囲との比較・厳しい規制・過剰な期待と落胆。
親が投げかけた言葉は、想像以上に子どもの心に深く刻まれています。

「あんなにやってあげたのに」「あのときは親自身もいっぱいだった」
そのような言葉は、大人になった子どもの耳には入りません。
今は小さく弱い立場の子どもであっても、立場はいずれ逆転するもの。
評価され続けた子どもは数年後、親を評価する子どもになっていきます。

思春期 女の子出典:www.photo-ac.com

「この子の人生はどうあるべきか(親視点)」ではなく「この子はどんな親を好きになるか(子視点)」に目を向けるのも必要です。

「今、親子はどこにいるのか」に気づいておく

夢中になればなるほど、周りを見る余裕はなくなります。
合格までの点数・偏差値・順位で頭の多くが占めていれば、子どもが感じている負担には気づけません。

親子出典:stock.adobe.com

子どもの健康以上に尊い財産は、この世にありませんよね。
長い目で見たとき、親子関係を一歩引いてみる姿勢・子どもの気持ちに目を向ける時間は、何よりも大切です。
「今、どんな状況なのか」冷静に見る視点が意外な近道になるんだと思います


著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。