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【ババアと言う息子】14歳の息子がかわいいと思えなくなった私は母親失格?

家族・人間関係

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 心理カウンセラーうさこの心を軽くする考え方

2023.10.26

心理カウンセラーの古庄由佳です。カウンセリングに来てくださる方には「うさこさん」と呼ばれています。 自分の心に蓋をして、我慢を続けて生きるのはとてもしんどいですよね。最近はスマホやSNSのおかげで情報が溢れてすぎているためか「自分の考え方がおかしいのかも」「私だけじゃないし」とガマンしてしまっていることもあるようです。自分の人生をHappyにするかどうかは自分が決めると信じて、皆さんのお悩みに答えます。

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連載:心理カウンセラーうさこの「心を軽くする考え方」

相談:14歳の息子に「ババア」だの言われてかわいいと思えなくなった

反抗期出典:stock.adobe.com

(埼玉県 ニコ 43歳)

12歳の娘と14歳の息子がいます。

14歳の息子の方が反抗期なのか、「ババァ」「うるせぇ」など、ドラマで聞いたことがあるような言葉で反抗してきます。

夕飯ができたよ、と部屋に呼びに言っても「今ゲームしてんだよ」と部屋の中から言われ、時間になっても出てきません。

娘はとてもやさしい子で、今は娘に救われています。

私は息子が小さい頃、あれやれこれやれと指示だしの子育てをしてきました。
そのやり方が悪くて今こうなってしまったのではないかと後悔しており、正直息子がかわいいと思えない自分もいます。そんなの母親失格ですよね。

これからどう息子と向き合っていいのか。アドバイスを頂けたらうれしいです。

お子さんの中で起こっていること。

回答

これまで大切に育ててきた息子さんに「ババァ」「うるせぇ」だなんて言われたら、ショックですよね。母親だって、一人の人間ですもの。心が傷ついてしまうのも無理はありません。ですから、母親失格だなんて、自分を責めないでくださいね。

第二次反抗期は、小学校高学年から中学生くらいの時期に起こりやすいと言われていますよね。ニコさんに限らず、お子さんの態度がこれまでとは変わってしまったように感じて、接し方に悩まれるお母さんもきっと多いのではないでしょうか。

ですが、安心してください。子供は、親への依存と反抗を繰り返しながら、少しずつ自立した大人へと成長していくと考えられています。つまり、反抗期も、お子さんにとっては成長のための大切なプロセスなんです。

では、この頃のお子さんの心の中ではいったいどんなことが起こっているのでしょう。
 
心理学では、いわゆる思春期と呼ばれる時期の最大の課題は、「アイデンティティ(自我同一性)の確立」と言われています。自我同一性とは、「自分はどういう人間なのか」を理解すること。

そのために、この時期はこれまで当たり前に受け入れてきたものに対して疑問を抱きやすかったり、友達などまわりの人と自分を比較して劣等感を感じやすかったり。つまり、受け入れるものを改めて自分で選び直そうとしたり、まわりとの比較の中で自分を知ろうとしたりすることで、他の誰かとは違う「自分」というものを確立しようともがいている状態なのです。

さらに「自立したい」という欲求から、依存しているものから離れようとする心理も働きます。まだまだ依存せずには生きられない部分があることを自覚しつつも、依存したくないという欲求も高まる。そんな葛藤や苛立ちが自然と起こってくるのもこの時期なのです。

ニコさんから見ると、今の息子さんの態度は、親を大切にしていないように見えるかもしれません。でも、きっと本当は、決してそうではなくて、むしろ、これまで育ててくれた親が自分にとって大きくて大切な存在だからこそ、自分の価値観や考え方と、親の価値観や考え方が自分の中で切り離せないほどに混じり合い、「自分はどういう人間なのか」がわかりにくく感じてしまう。だからこそ、まるで拒絶するような態度で、いったん切り離し、自分を知ろうともがいている。そんなことが起こっているのではないかと思うのです。
 
いかがでしょう。こんなふうにお子さんの中で起こっていることを想像してみると、あの態度も少し違ったふうに見えてきませんでしょうか。

実は、心理カウンセリングをしていると、「やりたいことがわからない」「相手に自分の意見が言えない」といったご相談も多くお受けしますが、その中には子供の頃に親に反抗することができなかったと振り返る方もいらっしゃいます(とはいえ、逆に反抗期がないことが必ずしも悪いこととは限りません)。

そういう意味では、お子さんが反抗期のもがいている自分を親に対して表現できるのも、心のどこかで親が受容してくれている安心感を感じているからこそ、と言えるかもしれません。
 
「導く」子育てから、「寄り添い、見守る」子育てへ。
これまでが良くなかったということではなく、子供の成長に合わせて子育てのスタイルも変えていくとき、親子の距離感や関係性を再構築していくときなのだと捉えてみてください。
 
自分の意見が相手とは違うことや、自分は自分のペースで進めたいことなどを上手に表現できず、そんな自分の未熟さに苛立ってしまう。それは決して優しさがなくなってしまったということではなくて、自分で生きる力を育もうともがいている、その第一歩目なのかもしれない。そんなふうに捉えて、お子さんを信頼し、見守ってあげてくださいね。応援しています。
 

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著者

古庄由佳さん

古庄由佳(うさこ)

17歳の頃に、徐々に視機能が失われていく難病であると診断される。病気に負けず頑張りたいのに、体も心も人間関係もどんどん壊してしまう。そんな生きづらさから、心のことを学び始める。2012年より、心理カウンセラー、セミナー講師、心理スクール講師として活動。自分との仲直りをテーマに、本来の魅力や才能を解き放っていく心理カウンセリングの他、病気からのサインを受け取り、本来の自分らしい人生を取り戻していく卒病カウンセリングも好評。20年近く住んでいた東京を離れ、2019年に福岡県糸島市に移住。著書は「心屋流 戦わないで生きていく」「心屋流 がんばらないレッスン」(ともにPHP研究所)。

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