「しりとり」は左脳、「マジカルバナナ」は右脳
本間先生:そうなんです。言語っていうのは社会的に獲得していくものなので、家族の生活の中だけで使われるキーワードってとても限られています。そういう意味でも、こういった小さな工夫で親が潜在的にもっている生活の中では出てこないボキャブラリーを出していくことって良いと思います。
それから「しりとり」以外にも「マジカルバナナ」もお勧めですね。
門川さん:「バナナ」と言ったら「すべる」、「すべる」といったら「スキー」、「スキー」といったら・・・という感じで遊んでいく連想ゲームですね。昔、バラエティ番組で大流行しました。
本間先生:この遊び、世代によっては「いろはに金平糖」として覚えている人もいるんですが、きっとこの読者の方々は「マジカルバナナ」世代でしょうね。私はこれ、実は大学の授業でも英語バージョンで使ったりします。「Apple」といえば「Red」、「Red」といえば「Blood」、「Blood」といえば「Hospital」のような感じで。なぜお勧めしたり授業でも使ったりしているかというと、「しりとり」が左脳、脳の言語野を使うのに対して、「マジカルバナナ」は右脳の働きも入ってくるんですよ。連想の過程で脳内で映像を処理するから。そういう意味でも脳にバランスよく刺激を与えることになるし、何より歩きながらやると楽しいですよ。
そうやって単に散歩に行こうっていうよりも、ブラタモリごっこだったり、しりとり散歩だったり、何かの要素を乗っけて子どもと一緒に行けると良いですね。
門川さん:親も子も在宅時間の中で運動不足にもなりがちですからね。散歩の時間を意識的に作っていくことは大切ですね。
本間先生:時間が経った時に「なんかあの頃、近所散歩しながら「しりとり」したよね」ってのも、きっと振り返った時に良い思い出になると思いますよ。あとは防災マップがあるようだったら、これを機に地図をみながら避難所を確認したりとか防災散歩をしたりするのも良いですね。地図も今の時代、あらためて開く機会も減っているので。
「無理強い」はしない。「応援」する
門川さん:そういう親子の時間、コミュニケーションの中から、子どものもっている興味や関心が見つかっていくと良いんでしょうね。
本間先生:ゲームをやるってことは、ゲームよりも面白いものに子どもが出会えていないってことでもあります。この時間を使って、ゲームよりも面白いものを子どもが発見するサポートをできると良いと思います。例えば今、お料理にハマりだしている子どもが増えているらしいですからね。家の中や近所でだって興味関心を広げることはできます。
ただ、そうしていく中で子どもが「こういうの苦手だな」「やりたくないな」となったようであれば、「無理強い」はしないことが大切です。よく、良かれと思ってだと思うんですが自分が得意なことを子どもに押し付けちゃうことがあるんですよね。これをすると「嫌い」にさせてしまいます。教科教育でもそうなのですが、一番やっちゃいけないのは「嫌い」にさせることです。すべてに興味をもつなんてことは無いわけですから。できれば好きになって欲しいと思っていても、最優先は「嫌い」にさせないことです。押し付けないことです。
そして、少しでも興味が見えてきたり、やりたいことが見えてきたら、親として徹底的に「応援」してあげることが大切ですね。
教えてくれたのは 本間正人先生
本間正人
「教育学」を超える「学習学」の提唱者であり、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師としてアクティブ・ラーニングを25年以上実践し、「研修講師塾」を主宰する。京都芸術大学教授・副学長、NPO学習学協会代表理事、NPOハロードリーム実行委員会理事。コーチングやポジティブ組織開発、ほめ言葉などの著書多数。
関連著書「新版 笑顔のコーチング 子育て77のヒント」
聞き手:門川良平
大学卒業後ベネッセコーポレーションに入社。進研ゼミ小学講座の教材開発、マーケティングに従事した後、通信制大学にて小学校教員免許を取得。都内の公立小学校にて教壇に立つ。その後、出版社にて学習事業のプロデューサーを経て独立。独自に開発した小学生から学べるSDGsゲームで、ワークショップ型の学びを展開中。
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