親から子への「ヒーローインタビュー」
門川さん:子どもの頑張り、達成を認めてあげられる機会にしていけると素敵ですね。
本間先生:子どもには子どもの世界があって、実は同じ家庭の時間を過ごしていても親が気づかないところで頑張っていたり嬉しかったり一生懸命やっていたりするものがあるんですよね。小さい年齢の間は「聞いて聞いて〜僕ね〜」って話してきてくれるんですが、小学校年代になってきて、自我が発達し始めると段々話してくれなくなってくる。だから私は「ヒーローインタビュー」をお勧めしています。
門川さん:「ヒーローインタビュー」というと、スポーツで活躍した選手に向かってアナウンサーが聞くインタビューですよね。
本間先生:はい。あれを、親が聞き役、子が話し手でやると良いですね。「今日の1日で嬉しかったこととか頑張ったことってどんなこと?」って。ぽつりぽつりとでも話してくれたら、「やるじゃん!」「頑張ったね!」と認めてあげることですね。できてなかったことを振り返らせるのではなく、良いことだけ聞くこと。美点凝視って言うんですけど、相手の良いところを見つめ、それを相手に伝えてあげること。これが次の頑張りのためのエネルギーになるんです。
門川さん:今、お聞きしていて思ったのですが、その「ヒーローインタビュー」、親も受けたいですね(笑)自宅中心の生活の中でなかなか頑張りが見えにくいのですが、皆とても頑張っていますよね。
本間先生:その通りです。私は研修でもペアワークで参加者に「ヒーローインタビュー」してもらったりするんですが、子どもに対してだけではなく、社会全体に広まっていくと良いなと思います。パートナー同士でヒーローインタビューしたり、たまには子どもからヒーローインタビューを受けたりとかね。
他との比較にエネルギーを注ぐのではなく……
門川さん:今は自治体や学校によっても対応方針がまちまちで、そういった状況に対する不安も保護者の中で広がっているように思います。私の周りでも、住んでいる自治体に対してオンライン授業を求める署名活動が起こっていたりします。
本間先生:不安に思うことも含めて、学校教育に対して関心が高まっているということ。このこと自体は良いことだと思います。適切に提言を上げていくということをきっかけに、親自身もどういった学びが提供されているのかを学ぶきっかけにもなります。
一方で、他の自治体と比較してどうこう、という部分については、あまり気にしなくて良いと思います。
今までの教育の現場の中で、個人主義モデルの競争原理が過剰に幅をきかせてきました。例えばテスト中にわからない問題があった時、「教えて」って友達に聞いたらカンニングですよね。競争っていうのは他者との比較をとても重視します。
でも社会に出れば、チームで仕事をし、協力原理の方がはるかに重要です。さらに言うと、現在小学生のお子さんが18歳で社会に出るときの社会は、今のような過剰に競争原理が幅をきかせる社会ではなくなってきていると思います。
他者との比較にエネルギーを注ぐのではなく、自分の強み・自分の持ち味・自分の興味関心をどう活かしていくのかを重視する社会に変化していきます。だから、意識を他の町、他の家の子、に向けるのではなく、わが町、わが子に向けることが大切です。特にわが子が何に興味関心を示しているのかに、親は注目した方が良い。そうすると漢字や計算や、できていないところに目が向くのではなく、その子のもっている強み・特徴がわかってくると思います。
門川さん:それはこの休校期間に限らず大切な観点ですね。
本間先生:その通りです。そして、休校期間であるというのは、ある意味で学校に時間がとられないのでお子さんに向き合うチャンスです。ぜひ、そういう時間に使ってもらいたいなと思います。
門川さん:わが家も小学生と保育園児を抱えてまだまだ続く在宅時間。ぜひ今日伺ったお話を踏まえて子どもに向き合っていきたいと思います。今日はお忙しいところありがとうございました。
教えてくれたのは 本間正人先生
本間正人
「教育学」を超える「学習学」の提唱者であり、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師としてアクティブ・ラーニングを25年以上実践し、「研修講師塾」を主宰する。京都芸術大学教授・副学長、NPO学習学協会代表理事、NPOハロードリーム実行委員会理事。コーチングやポジティブ組織開発、ほめ言葉などの著書多数。
関連著書「新版 笑顔のコーチング 子育て77のヒント」
聞き手:門川良平
大学卒業後ベネッセコーポレーションに入社。進研ゼミ小学講座の教材開発、マーケティングに従事した後、通信制大学にて小学校教員免許を取得。都内の公立小学校にて教壇に立つ。その後、出版社にて学習事業のプロデューサーを経て独立。独自に開発した小学生から学べるSDGsゲームで、ワークショップ型の学びを展開中。
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