「無理なく続けられること」に、その子の強みや特徴が隠されている
本間先生:はい。環境への適応、というのが「本来の学習」の一つの意味です。そして「本来の学習」のもう一つの意味は何かというと。「開花」です。人のもっている可能性・強み・特徴をいかして発揮していくこと。強み・特徴というのは子ども一人ひとり、それぞれ全く異なります。ここに対して、「教育」というアプローチでは例えば40人学級では40人に対して同じ内容を伝えることしかできなかった。しかし、家庭で進める「学習」というアプローチでは、その子、それぞれの強みや特徴、興味関心に向き合うことができます。ある意味で、みんなと同じことをする、みんなと同じ時間を過ごすという制約から解き放たれているので、それぞれの「学習」を進めることができる。
門川さん:学校に行けない時間だからこそできることがあるということですね。
本間先生:はい。「Succeed」という動詞があります。これは「成功する」という意味。これに関連する名詞が2つあって、一つは「Success(成功)」ですね。もう一つは「Succession」。これは「継承」とか「継続」という意味なんです。
つまり、「その人が無理なく続けられること」は、その人の素質・資質・天賦に即したものであり、その「継続」が可能性の開花、ひいては「成功」に繋がるということです。
門川さん:うちの子の可能性ってなんだろう?とか。強みって……?となると変に親の期待や思い込みが入ってしまいがちですが、「うちの子が無理なく続けられることって?」という視点で考えると向き合いやすいですね。
本間先生:極端な例ではありますが、さかなクンは「魚」。こんまりさんは「片付け」に対する突き抜けた興味関心を突き詰めた結果ですよね。多くの労働が自動化されたりテクノロジーにとって変わられたりしていくことが予想されるこれからの時代は、今まで以上に個々の強み・特徴を伸ばす、そしてそれを活かすという視点が大切になってきます。「Take Advantage of Staying Home(テイク・アドバンテイジ・オブ・ステイイング・ホーム)」と最近よく言うのですが、ぜひこの休校期間を活用して、お子さんが「無理なく続けられる何か」を見つけてもらいたいなと思います。
我が子と向き合うために、会話の時間を作ろう!
門川さん:一方で、ついゲームやyoutubeの動画でダラダラと時間を過ごさせてしまっている……。と言う声もよく耳にします。
本間先生:大切なのはお子さんをよく観察すること、向き合うこと。ゲームにしても、youtubeにしても、何をしているのか、何に興味をもっているのか。時に親御さんも一緒にやってみたり見てみたりするのも良いと思います。その上で、やはり会話・コミュニケーションをとっていかないと子どものことは分かってきません。分かっているつもりでもなかなか会話する時間って作れていないんですよね。そのためには、私はまずはご近所のお散歩から始めることをお勧めしています。
教えてくれたのは……
本間正人
「教育学」を超える「学習学」の提唱者であり、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師としてアクティブ・ラーニングを25年以上実践し、「研修講師塾」を主宰する。京都芸術大学教授・副学長、NPOハロードリーム実行委員会理事、NPOハロードリーム実行委員会理事。コーチングやポジティブ組織開発、ほめ言葉などの著書多数。
関連著書「新版 笑顔のコーチング 子育て77のヒント」
聞き手:門川良平
大学卒業後ベネッセコーポレーションに入社。進研ゼミ小学講座の教材開発、マーケティングに従事した後、通信制大学にて小学校教員免許を取得。都内の公立小学校にて教壇に立つ。その後、出版社にて学習事業のプロデューサーを経て独立。独自に開発した小学生から学べるSDGsゲームで、ワークショップ型の学びを展開中。
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