育てやすさ、育てにくさは「親から見た理想の子ども像」が関係している
――一般的に女の子の方が育てやすいとか、男の子は育てにくいと聞きます。高祖さんから見た男の子、女の子の違いはありますか?
高祖常子さん(以下、高祖):私自身、男の子2人と女の子1人を育ててきましたが、とくに性別によって差があるとは感じません。一般的には、女の子はおとなしい、ふんわりしている。これに対して男の子は突拍子もないことをする、力が強い、場合によっては危ない、汚いことを面白がる傾向がある気はします。実際に我が家の男の子もそうでした(笑)。ただ、活発だから育てにくい、おとなしいから育てやすいということが必ずしもイコールではないと思います。
棒を拾う、ダンゴムシをポケットにしまう。男の子はママからしたら謎だらけ
――男の子、女の子とあまり変わりはないということでしょうか?
高祖:育てやすさについて、ママからみたときの育てやすさということでいえば、同性の女の子の方が手がかからない、と感じることはあるかもしれませんね。逆に、お父さんから見たら、同性である男の子のほうが育てやすいと思うかもしれません。
でも、ママは困りますよね。ママからみて「なんで男の子はそんなことをするの!」と思うことはたくさんあるでしょう。
たとえば、急に走りだす、棒を見つけたら必ず拾って振り回す、ポケットの中にセミの抜け殻やダンゴムシなどを入れて持ち帰る(ときには洗濯をしたあとに発見される)、すぐに迷子になるなど。もちろん、まずは「あ゛―」とうんざりした気持ちになるかもしれません。でも、こんなときは、男の子の視点から見て「なぜ虫をポケットに入れたんだろう。宝物なのかな?」「棒を持って悪者と戦っているのかな」などを想像してみる。
そうすると、今まで大変だと思っていたことが、ちょっとワクワクして楽しい世界にかわるかもしれませんよ。
男の子、女の子の「こうあるべき論」から脱皮できる?
高祖:ママたちが意外ととらわれているのは、「男の子はこうあるべき、女の子はこうあるべき」という先入観からきている問題だと思います。職業などもそうですよね。運転手さんや外科医というと、ぱっと男の人が浮かぶということはないでしょうか。最近、ドラマ「ドクターX」の影響などもあり女性の外科医にも注目が集まるようになりましたが、まだまだ男女観は根強いですよね。
――そもそも、育てやすい子とはどういう子ですか?
高祖:子育てしやすい子どもというのは、自分の子育て観や考え方にズレがない子と思っていませんか。自分の中の「育てやすい子」「理想の子ども」像が強いと、その理想に子どもを合わせようとしてしまいます。
「手間がかからなくて育てやすい子」というのは、親から見たら自分と同じ気質だったり、自分の理想的な子ども像に当てはめてしまっていることが多いかも。子どもが2人以上いたら、「上の子とは合うけど、下の子とは合わない」などありますよね。そんな風に感じる場合は、性別による差も多少影響しているかもしれません。
兄弟関係によって子どもの性格にも影響が出る⁈
――高祖さん自身は、お子さんに対してどう感じていましたか?
高祖:うちは一番上の子が男の子、その次が女の子、一番下が男の子です。真ん中の女子は育てやすいといえば育てやすかったかもしれません。男女の性差ではなく、子どもが3人いる場合、真ん中は育てやすい、手がかからないと思う傾向があるようですね。知り合いのご家庭でも3人兄弟の真ん中の子は手がかからなかったと親としては感じていたのに、大人になってから真ん中の子に「お兄ちゃんと下の子の3倍くらい愛情が欲しかった」と言われたそうです。
一番上は初めての子だからいろいろ手をかけるし、末っ子は、小さくてかわいい。お世話の手もかかるし気をかけるじゃないですか。親が上の子と下の子に手を取られている様子を感じ、真ん中の子は気をつかってバランスをとったり遠慮していることもありますね。
先ほどの兄弟の話の続きですが、食べ物屋さんに行くと下の子は金額が高くても自分の好きなものを頼むそうです。それに対して真ん中の子は安いものばかり注文していたそう。ママは真ん中の子を見て「この子はそれが好きなんだな」と思っていたけど、大人になってから話を聞いたら「あまり高いものばかりを頼むと悪いかなと思って気をつかっていたんだ」といわれたそうです。
ここでいえることは、親からして「育てやすい子」というのは、もしかしたら子どもが親に対して気をつかっているかもしれないということです。そんな視点で子どものことを見ることも大切です。
「いい親」になろうとするのをやめてみる
――高祖さんの考える理想の子育てとは?
高祖:まずは「いい親」から降りることです。子どもを「主語」に考えると、いろいろ見えてきます。子ども自身がどういうふうに考えて行動していきたいのかをサポートしていく。子どもの上に立って「親だからいい方向に導いてあげなくちゃ」というのではなく、道を選ぶのは子ども自身だから、親はそれをサポートする。子どもが「どうしよう」と迷ったり困っていることがあれば、迷いに共感し「こういう考え方もあるよね」と声をかける。そうやって選択肢を増やす手伝いをする。迷ったり困っているときは、視野が狭くなっていることもありますから。
一番は子どもの応援者になること。子どもがいじめられたり、先生から叱られて落ち込んだりしているときに、困りごとに寄り添いつつ、一緒に解決策を考えて常に応援していくことが大切です。
――常に子どもを応援してあげられるママでいられるのが理想です。
自分の理想の子育てを子どもに押し付けていないかということは常に確認しておきたいですね。たとえば「ママはこういうふうになってくれたらうれしいな」と、親としての願望を持つことはいいですが、強要はダメです。たとえば、中学受験などでも、一緒に学校の様子を見に行くなどして、子どもが自主的に受験したいというのならいいと思いますが、親があまりにも誘導して受けさせるというようなことはやめた方がいいですね。
受験に合格できなかったことで親のほうががっかりしてしまうことってあると思うんですね。その様子を見て「親の期待に沿えなかった」と、子どもはさらに落ち込むこともあります。子どもが合格できるように応援するのはいいのですが、もし結果が出なくてもがっかりしすぎない。合否の結果を判定するのは学校です。もし、仮に受からなかったとしたら、残念な気持ちは受け止めつつ「でも、受験勉強すごく頑張ったよね」と、子どもの今まで(経過)を認め伝える。そこがあると、子どもはがんばってよかったと思えるし、次の道に歩き出せるでしょう。ママは最後まで子どもの応援者となってください。
教えてくれたのは 高祖 常子さん
高祖 常子(こうそ ときこ)さん
子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント。資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、ほか各NPOの理事や行政の委員、「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省)構成員(2019年)も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。
著書は『こんなときどうしたらいいの?感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。
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著者 高祖 常子
漫画・イラスト オキ エイコ
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