国際社会で求められている性教育とは?
「性教育」に対し、どんなイメージが浮かびますか?
ユネスコが発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、性に関する8つの重要事項を挙げています。
- 関係性(家族、友情、恋愛など)
- 価値、権利、文化とセクシュアリティ(価値観、人権、社会とセクシュアリティ)
- ジェンダーを理解する(ジェンダーの役割、平等性、ジェンダーに基づく暴力)
- 暴力と安全であること(性暴力、同意を得ることの重要性、情報メディアの使い方)
- 健康で幸福であるための方法 (意思決定、性に関する支援や援助先)
- 人体と発達(男女の身体の違い、性器、生殖など)
- セクシュアリティと性的行動(キス、ふれあい、性交渉、マスターベーション)
- 性と生殖に関する健康(妊娠、避妊、性交渉による感染症)
私自身、性にまつわる知識がこれほど多岐にわたるものだと理解していませんでした。
性に関する問題は、「人が生きる社会全体に関わる」といっても過言でないのではないでしょうか。
学校で教えられているのは、ごく一部の性知識
一方、日本の学校で教えられている性教育はどのようになっているのでしょうか。
地域性や学校の理念によって差はありますが、小学校から中学校までの間に取り扱われる性教育を大まかにまとめると、以下の通りです。
小学3-4年:男女の発育の違い、プライベートゾーンの説明、初経と精通
小学5-6年:生命の誕生(ただし、妊娠の経過は取り扱わない)
中学1-2年:月経と射精、受精と妊娠、異性との関わり方
中学3年:性感染症
先に挙げた国際的に必要とされる性知識と見比べると、日本の授業では、「人体と発達」・「性と生殖に関する健康」に留まっている印象があります。
では、ご家庭での性教育事情はどうでしょうか。
性教育を家庭で行っている?
今回、saitaでは独自のコミュニティ組織「saitaコミュニティラボ」で76人の子育て中の女性に「ご家庭でお子さんに性教育を行いましたか?(例:性に関する絵本を読ませる、など)」のアンケートを行いました。
その結果、約80%が性教育を家庭でしていない結果となりました。
性教育をしていない理由については、約60%の方が、「どのように教えたらいいかわからない」と回答していました。また、約25%の方が、「教えるにはまだ早い」「家庭で教えなくてもいいと思う」という意見に。
子どもの生誕事情や男女の性交渉について、親子間で話すのは難しい側面もありますよね。
性教育は長くタブーとして扱われてきたので、幼少期に親から教わった経験がある方も少ないかと思います。
また、”子どもの性欲求を刺激してしまったらどうしよう”などの心配もあるかもしれませんね。
家庭で行われている性教育とは?
では、性教育を実践された方はどんな内容を子どもに伝えているのでしょうか。
子ども向けの性教育の本を買ってお互いに読む・手渡す
ユネスコのガイダンスでは、性教育を5歳から始めることを推奨しています。
赤ちゃんはどうやってできるのか。男女の体の違いとは。体の大切な場所を隠さなければいけないのはなぜ?
絵本では、刺激の少ないソフトな絵が多く、命と性に関するポジティブなメッセージが載せられています。
お子さんがインターネットで不適切かつ刺激的な動画を検索してしまう前に、適切な情報を伝えるのも大事ですよね。
プライベートゾーンについて説明する
プライベートゾーンとは、性に関わる大切な場所のこと。
「水着で隠れる部分」と「口」を指します。
なぜプライベートゾーンに関する説明が、子どもにとって重要なのでしょうか。
それは、子どもを性加害から守るためです。
他人に見せない・触らせないのはもちろんです。
加えて強調したいのは「触れてこようとする大人や上級生がいたら、叫んで逃げる」行動の大切さです。
そして、安全な場所についたあと、親や先生に報告する。
子ども自身に性の目覚めがなくても、子どもが性加害の対象になることはありえます。
言葉がわかるようになったとき、親の手を放して歩けるようになったときから、何度も繰り返し伝えていく必要があると思います。
生理について
初経を迎えたとき経血を見て驚かないように、学童期から女性の体の仕組みを教えておくのも大切。
月経に伴い、腹痛や頭痛など体の不調が生じたり、ホルモンバランスの乱れによって気分の不調が生じるのも、必要な知識だと思います。
「体の変化も話し合っていい」空気を作っておくのは、辛さを一人で抱えないための予防策にもなります。
「自分を守るための知識」を伝えていく
今回のアンケートの中では、性教育をお風呂でされている方や、彼氏と旅行に行く高校生の娘さんへ避妊具を手渡された方もいらっしゃいました。
オープンな関係を作り、大事なメッセージを伝えるのは、とても大切な関わりだと感じます。
もちろん、それぞれの家族によって方針やコミュニケーションは様々。
各ご家庭、できる範囲で話し合っていくのがよいと思います。
「性」という漢字は、「心」と「生」から成り立っています。
「性器」・「性交渉」に関する教育だけでなく、
“「心」を守りながら「生」きていくための教育”こそが、求められているのではないでしょうか。
【参考文献】
・「改訂版 セクシュアリティ教育に関する国際テクニカルガイダンス エビデンスに基づいたアプローチ 2018 」https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192041/201910002A_upload/201910002A0006.pdf
・「性をめぐる子どもの臨床」吉川徹(編) 日本評論社 2022
・「お母さん!学校でも防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」のじまなみ(著) 辰巳出版 2018
・「包括的性教育 人権、性の多様性、ジェンダー平等を柱に」浅井春夫(著) 大月書店 2020