年齢に応じて必要な知識とは
どんな学習においても、子どもの発達や理解度に合わせた知識を身に着けていくのが大切です。
そして成長に伴い、少しずつレベルを上げていくことで抵抗感少なく学びの幅を広げられます。
では、性に関する知識レベルとは一体。
ユネスコの「国際セクシュアリティガイダンス」では、生殖に関する性教育の目安として、以下のようなレベル分けをしています。
レベル1(5~8歳)
「赤ちゃんがどこから来るのか説明する」
- 卵子と精子が結合して赤ちゃんができる
- 排卵、受精、受胎、妊娠、分娩など多くの段階がある。
レベル2(9~12歳)
「どのように妊娠するか、避けられるかを説明する。避妊方法を確認する」
- 無防備な性交は、妊娠やHIVなど性感染症にかかる恐れがある
- 常にコンドームや避妊具を正しく使用すると、意図しない妊娠や性感染症を防げる
- 低年齢での妊娠、出産には健康上のリスクがある
レベル3(12~15歳)
「妊娠の兆候、胎児の発達と分娩の段階を説明する」
- 妊娠には検査で判定できる兆候や症状がある。
- 妊娠中の栄養不足、喫煙、アルコールや薬物使用は胎児への発達リスクがある。
レベル4(15~18歳)
「生殖、性的機能、性的欲求の違いを区別する」
- パートナーとの性的な関係で、双方の合意はいつも必要。
- 意図しない妊娠や性感染症を防ぐ方法を事前に考えることが必要。
- すべての人に生殖能力があるわけではない。不妊に取り組む方法もある。
小学校の性教育授業と照らし合わせると、小学3-4年生の段階で避妊具の必要性を説き、中学生の段階で妊娠の兆候についての説明をするのは「まだ早い」と感じるかもしれません。
ですが、2017年に行われた日本性教育協会の調査によると、約5人に1人の女の子が高校卒業までに性交を終えています。
また、キスに関しては、女の子は4割、男の子は3割が高校のうちに経験しているようです。
「事前に知っておく必要性」を考えると、決して早すぎるガイダンスではありません。
また、性などセンシティブな話題に関しては、成長に伴って親からの説明を聞き入れなくなってしまいます。
「10歳の壁」と表現されるように、小学3-4年から精神的な成長が著しくなり、大人の言うことがまっすぐ入りにくくなる段階もあるんです。
思春期になる前に、チャンスを捉えて性知識を伝えておくのが必要です。
「赤ちゃんはどうやってできるの?」と聞かれたら
「大事な質問だね」と受け止める
突然聞かれても困る気持ちは当然です。
ただそこで、「まだ知らなくていい」と拒否されてしまうと、”内緒の秘密なんだ”と捉えて余計に好奇心が増す子も。
また“自分や妹、弟はどこから来たのかな”と、素朴な気持ちを持っていた場合、出生を否定された気持ちになってしまいます。
一呼吸置く時間をとるためにも、まずは「大事な質問だね」と受け止めるのが大切です。
どうして気になったのかを尋ねる
質問の意図は様々で、必ずしも性行為について聞きたがっているとは限りません。
「どうして気になったの?」と尋ねてみると、他の動物との違いが気になっていたり、友達に弟や妹ができる話を聞いていたり、テレビやネットで情報を見ているなど、理由が明らかになるはずです。
どんな意図で聞いているのかによって答え方は変わってきます。
また、子どもの興味についても知れるので、まずは「どんなところから気になったのか」尋ねてみるのがおすすめです。
答えられないときはいったん保留。あとから一緒に調べる
本や文献によると「女の人と男の人それぞれに赤ちゃんのもとがあってね……」や「ママが持ってる卵子っていう卵と、パパが持ってる精子っていうものが」など、様々な伝え方が載っています。
どれも正解である一方、「これを言っておけば絶対大丈夫」という回答はありません。
事前にある程度知識を入れておき、そのとき必要な言葉を選ぶのがベストです。
また、科学的に正しい詳細な知識よりも、子どもの年齢で理解できる言葉で嘘偽りなく伝える態度が大切。
上手く説明できないときは、「大事な質問だからこそ難しいね・・ママ(パパ)の宿題にしておくから今度一緒に考えよう」と言い、後日調べておくのもひとつ。一緒に本を探しにいくのも役立ちます。
スルーするのではなく、「こないだ聞いてくれたことなんだけどね」と、あとからしっかり知識を伝えましょう。
戸惑いや焦りは当然の気持ち
子育てをする中では、親の価値観で判断していいのか迷ったり、とっさに正しい答えをだせないときもありますよね。
性に関するデリケートな質問は特に、戸惑ったり焦ったりすると思います。
すぐに答えられないときは保留にし、考えをまとめてから伝える術をもっておくと、少し気が楽になるのではないでしょうか。
子どもと一緒に、いろんな世界を学んでいけるといいですよね。
参考文献
・「青少年の性行動に関する調査結果」日本性教育協会(一般財団法人日本児童教育振興財団内) 資料30_青少年の性行動に関する調査結果 (moj.go.jp)
・「国際セクシュアリティガイダンス」(UNESCO)