寝たくないなら、寝なければいい?
昔から人は、毎日夕方から夜にかけて眠る準備をしていき、自然と感じる眠気の中で脳全体を休息モードにしていました。
しかし今は、朝から晩まで映像や音に触れ続け、夜になっても脳の興奮がおさまらない。
「眠りたくても眠らせてくれない脳」になってきているんです。
”寝たくないなら寝なきゃいい”とお考えになる人もいるかもしれません。
ですが「適切な睡眠習慣」は子どもの成長にとって欠かせない重要事項なんです。
短い睡眠時間が及ぼす影響とは
身体症状との関連
睡眠に問題を抱える子どもたちは、当然昼間に眠い、横になりたい、なんだかずっと気だるいと…と感じます。
そして鈍い頭痛や肩こりなどの身体症状を訴えやすくなるんです。
免疫力が低下して風邪をひきやすくなるのはよく知られていることですが、血液中のホルモンの作用で太りやすい体質にもなっていきます。
活動性との関連
睡眠は、脳を休ませる役割のみでなく、学習したことを整理し、記憶を定着させる役割もあります。
最近の研究では、適切な睡眠時間の確保と熟睡感が学習能力のみならず、スポーツや音楽の技能向上にも繋がっていると示唆されています。
芸術に大きく関連する「創造性」や「集中力」に関しても睡眠が担う役割が大きいんですね。
気持ちとの関連
心理的な負荷が強いとき、寝つきが悪くなる・眠りが浅くなり睡眠不足に陥る方は多くいます。
一方、寝すぎる・寝ても寝ても眠いなど睡眠過多となる人もいるんです。
また、睡眠は感情コントロールにも大きく影響してきます。
脳が休息できないせいでストレスが増大するのはもちろん、夢を見る作業も気分の調整に一端を担っているのです。
現実に見聞きした要素が夢に断片的に現れますよね。
夢は記憶の整理や定着、感情の適正化を助ける役割があるんです。
子どもの睡眠習慣改善に必要な3つのこと
親自身の睡眠習慣を見直す
ゲームやスマホ時間の延長によって夜更かしをする子は多いですが、原因はそれだけではありません。
就寝時間が遅い子には、「なんとなく」「家族が起きているから」といった理由の子も多いよう。
大人が夜型化していると、子どもの就寝時間が遅くても気にならないようにも見受けられます。
睡眠時間を削る生活が、子どものライフスタイルにも影響している可能性に気づいておくのは大切です。
睡眠を「見える」化する
親が気になったときに早く寝るよう伝えても、一時的な対処で終わってしまいます。
入眠時間や起床時間に加えて途中で目が覚める時間があったかどうか。
昼寝の長さや頻度、休日の睡眠時間などを一度整理するのが有効です。
寝る時間にばらつきがあれば一定にする、休日に寝溜めしているのならば平日の睡眠時間平均を見直す。
寝ているはずなのに眠い子は、起きたとき頭がすっきりしているか、朝食をとったか、などのチェック項目を追加してもよいでしょう。
睡眠障害を見逃さない
生活スタイルや睡眠習慣の改善だけでは対処できないとき、睡眠障害を考慮する必要もあります。
- 寝ている途中に呼吸が止まってしまう。
- 入眠まで1時間以上かかる。
- 寝つきや夜間に身体の異常な動きがある。
- 日中の眠気が強すぎる。
- 朝起きれない、朝ごはんが食べられない。
症状が1か月以上続いている場合は、専門機関に相談するのもおすすめです。
脳の成長を支える睡眠
睡眠には脳を「創る・育てる・守る」3つの役割があるといわれています。
「創る」:胎児期におけるレム睡眠状態から覚醒状態にしていく。
「育てる」:記憶を定着させ、認知機能や感情調節機能をはぐくむ。
「守る」:ノンレム睡眠により、脳をクールダウンさせ、過労を防ぐ。
寝る時間を惜しみ頑張り続ける時間は、逆に「もったいない」のかもしれません。
良質な睡眠によって、満足度の高い日常を得られるといいですよね。
参考文献
「子どもの睡眠ガイドブック」駒田陽子・井上雄一(編) 朝倉書店 2019
「日常診療における子どもの睡眠障害」谷池雅子(編)診断と治療社 2015