教えてくれたのは……ファイナンシャルプランナー・原田茂樹さん

ファイナンシャルプランナー。「家計平和から家庭平和へ」をモットーに、主に子育て世代に役立つお金の知識を届けている。通称「節約お兄さん」として、Instagramを中心に固定費を浮かせる節約術や資産形成について発信中。
相続で揉めやすい家庭の特徴【7選】
ファイナンシャルプランナー・原田茂樹さんによると、相続で揉めやすい家庭にはいくつかの共通点があるそうです。今回は、具体的な特徴7つについて詳しく教えていただきました。
1. 複数の子どもがいる家庭で、遺言書が残されていない場合
相続で揉めやすい家庭として典型的なのが、子どもが複数いて遺言書がないケースです。
通常、遺産分割の割合は法定相続分で決まります。しかし、子どもが複数いると「預金は平等に分けたい」「家を継ぐのは自分だと思っていた」など、きょうだい間で主張が異なることが多く、意見がまとまりにくくなります。
親の意向が遺言書として明確に残されていなければ、それぞれが「自分こそが正しい」という思いを持ち、感情的な対立に発展しやすくなるのです。
2. 再婚や内縁関係がある家庭
再婚や内縁関係がある家庭は、相続で揉めやすい傾向があります。理由として、前の配偶者との子どもと、現在の配偶者・子どもとの間で利害が対立しやすいことが挙げられます。
特に再婚相手と前妻(前夫)との子どもに交流がない場合、相続の話し合いの場が初対面になることがあり、感情面でこじれてしまうケースも少なくありません。
3. 財産の多くが不動産である家庭
財産の多くが不動産である家庭も、相続に関するトラブルが発生しがちです。
不動産は分けにくいため、「売却して現金化したい相続人」と「先祖代々の土地を手放したくない相続人」との間で意見が対立しやすい傾向にあります。
4. 事業を営んでいる家庭
会社経営や農業、自営業など事業を営んでいる家も、相続で揉めやすい家の代表例として挙げられます。事業に使う土地や建物、機械などの事業用資産は、どうしても後継者に集中しがちです。そのため、他の相続人が「自分の取り分が少ない」と不満を抱きやすくなるのです。
例えば、経営者が「事業は長男に、預金はほかの兄弟へ」と考えていたとしても、実際には預金額が少なく十分なバランスが取れないケースも少なくありません。資産の偏りが火種となり、話し合いがこじれてしまうことも多いのです。
5. 介護を一部の子が長期間担っていた家庭
特定の子どもが介護を長期間担っていた場合、「自分だけ負担が重かった」という不満が生まれがちです。
介護の貢献度を評価する「寄与分」の主張は法的に認められていますが、金額を明確に算定するのは難しいです。結果的に、相続全体の調整が進みにくくなるという問題が起きやすくなるのです。
6. 相続人同士の仲がもともと良くない家庭
相続人同士の仲がもともと悪く、普段から交流が少ない家も、相続に関する話し合いがスムーズに進みにくい傾向にあります。このような家庭ではちょっとした誤解やすれ違いが不信感につながり、遺産分割が感情面の対立に発展しやすいのです。
さらに、過去に金銭トラブルや価値観の衝突など具体的なトラブルがあったような場合、当時の感情が相続の場で再燃し、さらに揉め事が深刻化することもあります。
7. 生前贈与や特別扱いがあった家庭
生前贈与や特別扱いがあった家も、相続で揉めやすい傾向にあります。例えば、過去に「長男だけに多額の援助をした」「次女だけマンション購入費を負担した」といった事例があると、他の相続人が不公平だと感じ、トラブルの火種になりやすいのです。
これらは“特別受益”として相続時に持ち戻し計算されることがありますが、実際には贈与額や時期を証明するのが難しいことも多いです。そのため話し合いがこじれ、結果的に相続手続きが長期化するケースも少なくありません。
相続に関する事前準備を整えておこう
いざというときに慌てないためには、相続に関する準備を日頃から少しずつ進めておくことが大切です。財産の内容や保有先を正しく把握し、必要に応じて遺言書を作成したり、家族と意向を共有したりしておくことで手続きがスムーズになり、後々のトラブルの防止にもつながります。
また、相続税や手続きに関する基本的な知識を身につけておくと、専門家への相談もより的確に行えます。安心して未来を迎えられるよう、今から事前準備を始めておきましょう。







