教えてくれたのは……ファイナンシャルプランナー・原田茂樹さん

ファイナンシャルプランナー。「家計平和から家庭平和へ」をモットーに、主に子育て世代に役立つお金の知識を届けている。通称「節約お兄さん」として、Instagramを中心に固定費を浮かせる節約術や資産形成について発信中。
年末年始は1年の資産形成を見直そう
年末年始は、来年に向けた資産運用や積立の計画を立てる大切な時期です。まずは、今年1年でいくら資産が増えたかを振り返りましょう。自身の資産形成の状況を正確に把握するためには、毎月の貯金額だけでなく、過去1年間の(資産運用で増えた分も含む)貯蓄額を確認することが大切です。
また、来年予定している大きな出費(車の購入や教育資金など)もあわせて見積もっておくことで、資産運用に充てられる金額の目安も確認できます。
年末のボーナスの賢い使い道3つ
年末にボーナスを手にする人も多いでしょう。まとまった資金は、消費に回す前に一度「資産運用」という視点で使い方を考えてみるのがおすすめです。ここでは、年末のボーナスを賢く活用し、長期的な資産形成に役立てるための3つの使い道をご紹介します。
1. 新NISAを最大限に活用する(つみたて枠 × 成長枠の併用)
毎月の資産形成ではつみたて枠を利用する人が増えていますが、実はボーナスこそ、成長投資枠を効率的に活用できる絶好のタイミングです。日々の家計からは捻出しにくいまとまった金額を、一度に成長枠へ投入することで、長期の複利効果をより強く働かせられるという大きなメリットがあります。
また、この機会に個別株やテーマ株に挑戦してみるのも選択肢のひとつ。もちろんリスクはありますが、少額でも実際に売買してみることで、ニュースの理解度や市場の見え方がガラッと変わり、資産運用の経験値が一気に増えるメリットがあります。「つみたて枠でコツコツ」「成長枠で戦略的に」の二刀流は、これからの資産形成で最も理にかなった方法のひとつです。
2. 資格や副業などのスキルアップに投資する
「お金を増やす」ためには、お金自体を働かせる「投資」と、自分の生産性を高めて収入を増やす「スキル向上」の両方を同時に行うのが効果的です。
そのため、「自分の能力に投資すること」こそ最もリターンが高いお金の使い道です。スキルアップや資格取得、学習環境の改善などに投資し、年収が数十万円上がれば、その効果は株式投資の利回りを大きく上回ることも珍しくありません。
・専門性を高める資格取得
・デザイン・ライティング・マーケティングなどの副業スキル
・副業や独立の準備費用(機材・教材・講座など)
これらは、未来の自分が“お金を生み出す力”を育てる投資です。特に今は、年齢に関係なくスキルさえあれば複業・副業がしやすい時代。ボーナスを次の収入源をつくるための原資にすると、翌年以降のキャッシュフローが劇的に改善する可能性があります。
3. 手元資金を厚くする
物価高で不確実性の高い今こそ、十分な手元資金を持っておくことが安心につながります。そのため、住宅ローンの繰上げ返済を優先するのはあまりおすすめしません。
変動金利がじわじわ上昇している今、繰上げ返済を行えば確実に利息を減らせることは事実です。ローン残高を圧縮することは、数字上「損をしない投資」ともいえます。
しかし、現在の低金利環境に加え、物価上昇が続く状況を踏まえると、繰上げ返済を最優先にするのが得策とは限りません。なぜなら、インフレ時代は手元資金を確保しつつ資産運用に回したほうが、長期的なメリットが大きくなりやすいためです。
たとえば、変動金利が0.6〜0.8%程度であるのに対し、株式インデックスなど長期運用の期待リターンは年3〜5%前後とされており(※2025年11月時点)、「返す」より「増やす」ほうが総資産としてプラスになる構造となっています。さらに、繰上げ返済で手元資金を減らしすぎると、万が一の出費(病気・教育資金・修繕費など)に対応できず、結果として再び借り入れをするリスクも生まれるため注意が必要です。
来年の資金計画をしっかり整えよう
1年の終わりは、自身の資産形成の状況を確かめる大切なタイミングです。この1年でどれだけ資産が増えたのか、運用益も含めて振り返ることで、無理なく続けられる資産運用の方針が明確になります。新しい年を安心して迎えられるよう、今のうちに来年の資金計画をしっかり整えておきましょう。
注意点
※本記事は特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資には価格変動・元本割れのリスクがあります。資産運用の判断は、ご自身の責任と判断にて行ってください。
※一括投資は「資金を早く市場に投じられる」というメリットがある一方、購入時の市場環境によっては下落リスクもあり、複利効果が必ず強く働くわけではありません。積立投資と一括投資にはそれぞれ長所とリスクがあるため、自身のリスク許容度と家計状況に応じて選択する必要があります。




